オリンピックへの道BACK NUMBER
体操・寺本明日香は重圧を背負い続けてきた ロンドン、リオに続く3度目の五輪を失ったとき涙を流して語ったこと
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2021/05/30 11:05
日本女子の体操界を牽引し続けてきた寺本明日香が五輪の代表枠を外れ、補欠に回ることになった
だからまだ、引退はしない
ただ、日本代表としての活躍をはじめ長年にわたり第一線に立ち続け、そこで果たしてきた役割の重さが、彼女の歩みを雄弁に物語っているように思える。
そのスタートは小学1年生にさかのぼる。
「公園でやっていて、もうちょっと技とかないのかなと思って、お母さんに体操クラブに行きたいと言いました」
以来、打ち込んだ体操で日本代表に昇りつめ、見せてきたのは芯の強さだった。責任感の強さもまたあった。それをあらためて示したのは、代表入りがならなかったあとの言葉だ。
「補欠に選ばれたら、今の私にできる最大限の仕事を、みんなをサポートできるように精一杯、頑張ることが使命だと思います」
その後、補欠として同行することが決まったが、代表に落ちてなお、自分のいる位置、やるべきことに思いを巡らせていた。
だからまだ、引退はしない。
最後までまっとうしよう。それも寺本らしかった。