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「ボキボキって」大ケガの北園丈琉18歳に内村航平からの電話が鳴った 「それで『頑張ろ』っと思いました」
posted2021/05/22 11:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO SPORT
東京五輪の代表選考会を兼ねて行なわれた体操のNHK杯(5月15、16日=長野・ビッグハット)。女子の村上茉愛、男子の橋本大輝らが代表の座を射止めたこの大会で、まだ18歳の北園丈琉(徳洲会)が見せた五輪への執念に胸を衝かれた体操ファンは多かっただろう。
なぜなら彼は1カ月前の試合で負傷し、絶望のふちに立たされていたからだ。
北園は4月の全日本個人総合選手権で予選をトップ通過しながらも、決勝の最終種目の鉄棒で落下。その際、マットに両手をついて両ひじを負傷し、激痛に顔をゆがめ、しばらく立ち上がれなかった。
「ボキボキといって、何かしら折れたと思いました」(北園)
精密検査の結果、左右のひじの靭帯損傷と、右ひじの外側の骨が剥離骨折していることが判明した。4カ所の病院に行ってスピード復帰の道を探ったが、数日間は腕立て伏せすらできない状況。「(NHK杯出場は)絶対に無理だと最初は諦めていた」という。
小学5年生の9月に東京での開催が決まった時から本気で目指してきた東京五輪。その切符に手が届きそうな状況で起きたアクシデントであり、「どうしよう」と頭が真っ白になったのは想像に難くない。
「内村さんから電話をもらったんです」
だが、たゆまぬ努力を積み重ねてきた北園には偉大なる味方がいた。けがをした初期段階で北園の心を奮い立たせてくれたのは、あこがれてやまない内村航平(ジョイカル)からの直電だった。
「ケガをして3日後くらいに、内村さんから電話をもらったんです。『大丈夫?』みたいな言葉をもらいました。それでスッキリしました」
電話の向こうで内村は「気持ちを切らさなければ、絶対に戻ってこられるから」と言っていた。
「それまで気持ちはほぼ折れていたんですけど、その言葉で自信がつきました。『頑張ろ』っと思いました」
会場に姿を現しただけで奇跡的だったNHK杯前日の公式練習。その後の会見で、北園ははにかむような笑みを浮かべてそう言った。