欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ブンデスのデュエル王・遠藤航は「日本のメッシで静かなリーダー」? 絶対的な信頼を得た理由<市場価値400%アップ>
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/05/24 11:01
今季のブンデスでデュエル勝利数No.1となった遠藤航。充実の時を迎えている
「パスとは呼べない雑なボール」も来るけれど
コミュニケーションや情熱は直接数値化できるものではないが、数値化できるプレーで表すことはできる。
「静かなリーダー」
遠藤は、そう評されることが多い。言葉で周りの選手を引っ張るのではなく、プレーで示してくれる。今季ここまでのブンデスリーガすべての試合でプレーし、いつでもパスを受けられるようにポジショニングと状況判断に気を配る。
仲間からの信頼がありすぎるせいか、時には「パスとは呼べないくらい雑なボール」が来ることもあるという。そんなとき相手は「ボール奪取のチャンス!」と思ってプレスをかけようとするが、遠藤は身体を巧みに使いながらボールをキープし、相手をはねのけて見せる。そして、気がつくとフリーの味方にパスが回っていたり、スペースへとボールを運んでいたりする。
展開するのが難しいときは、ファウルを誘って状況を落ち着ける。ちなみに、相手からの被ファウル数はチーム最多。味方からすれば、これほど頼もしい選手はいない。
ボール奪取能力の極めて高い遠藤がいることで、周りの選手は安心して攻撃を仕掛けることができる。もしボールを失っても、またボールを奪い返せるし、選択肢がないときは遠藤に渡せば何とかしてくれる。そんな絶対的な信頼関係がある。
試合を見ていると、そんな雰囲気が強く伝わってくる。
元ドイツ代表DFが語っていたデュエルの要点
そう言えば、元ドイツ代表のDFルーカス・シンキビッツが、1対1の競り合いにおける勝利数や勝率というのは、すべて同じように考慮されるものではないと話してくれたことがあった。
「例えば、バイエルンにおける守備的選手の仕事というのは、10回の競り合いで9回勝てというような状況になる。彼らがボールを持っている時間のほうが長いし、カウンターで攻撃を受けているときは自分のところでしっかりと食い止めなければならないからだ。
でも、チームとしてのバランスや戦力がそこまでではないチームの場合、相手にボールを持たれて守備で走り回るような状況や時間帯が増えてくる。だから精力的に競り合いに行く回数・頻度を増やして、やみくもではなく優れた状況判断力のもとで、ボールを奪い返せる局面を増やさないといけないし、それができる選手が非常に必要になる」
遠藤がシュツットガルトで見せているプレーは、まさにそれではないだろうか。
そして求められるプレーを毎試合のようにハイクオリティで見せてくれるから、チームは大事なところで崩れることなくシーズンを戦い抜けている。