濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
中村倫也と宇佐美正パトリックがLDH“所属”に…白濱亜嵐も「誇らしいよ」と語る格闘技への“ガチ度”とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byAbemaTV.inc/荒金大介
posted2021/05/24 11:00
LDHの新たな“所属メンバー”となった宇佐美正パトリック
「僕と倫也くんならUFCチャンピオンになれる」
対抗戦は『格闘DREAMERS』側の2連敗から、セミとメインで連勝という劇的な結末になった。セミで勝ったのが契約を勝ち取った宇佐美正パトリック。アマチュアボクシングで高校6冠を獲得した強豪だったが、東京五輪の予選は3位で出場権を逃した。夢を失ったところで知ったのがこのオーディションだった。
「僕は『格闘DREAMERS』に新しい夢をもらったので。恩返しがしたいんです。LDHの名に恥じないように結果を出したい。僕と倫也くんだったら日本人初のUFCチャンピオンになれると思ってます」
その宇佐美も「倫也さんはモノが違う」と言う中村は、最初から契約が決まっていた。一般参加者に混じってのオーディションは「第一の試練」としてだという。
レスリングで全日本2連覇、U-23世界大会優勝という図抜けた実績を持つ中村は、MMA転向を表明した時から大型ルーキーとしてスポットを浴びていた。
父の経営する会社が修斗の大宮ジムのオーナー、修斗のスポンサーでもあった。中村にとってジムは遊び場。「遊んでくれるお兄ちゃんたち」が、後楽園ホールで時に血を流しながら闘う姿に憧れた。その「お兄ちゃんたち」とはエンセン井上であり朝日昇。レスリングを習うきっかけは、山本美憂が大宮ジムで指導を始めたことだった。
「だから僕はMMAと向き合ってきた年月が違うんです」
レスリングで五輪を目指しながら、MMA転向のタイミングを今か今かと待っていた。“オリンピックに出られなかったからプロに”ではない。初めからMMAファイターになりたくてレスリングをやってきたのだ。
「ポテンシャルがないと分かれば契約終了もある」
最終審査の最終試合。それは番組のクライマックスでもある。「負けたら他の選手に契約を譲らなきゃいけない」と試合前の中村。高谷は「大丈夫だと思いますけど」としながら「もし世界を目指すポテンシャルがないと分かれば契約終了もある」と語っていた。
だが試合が始まってみれば完全な杞憂だった。同じレスリング出身で、MMAでのキャリアでは上回る新井拓巳を相手に試合開始42秒での勝利。しかもノックアウトだ。意識していたというジャブを丁寧に突き、カーフキックで転倒させると左ストレートを軸にラッシュをかけて倒し切った。右足を前に出した構えはレスリングの「右」。打撃系格闘技ではそれがサウスポーの構えになるからフィニッシュブローは左だ。左で強打を放つことにやりにくさもないという。
「体の使い方に関しては、レスリング時代からかなり研究してきたので」
大物。逸材。あるいは出自も含め“MMAの申し子”と呼ぶべきか。レスリングベースにして打撃も圧倒的。思い切りのよさもあり、デビュー当時の山本“KID”徳郁を思わせる試合だった。そう本人に言うと「それが一番嬉しい褒め言葉です」。