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「ボキボキって」大ケガの北園丈琉18歳に内村航平からの電話が鳴った 「それで『頑張ろ』っと思いました」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO SPORT
posted2021/05/22 11:00
内村航平も一目置いている北園丈琉(右)の、五輪への最後の挑戦が間もなく始まる
ミラクルが待っているかもしれない
振り返ると北園には過去にも大ピンチをかいくぐった経験がある。清風高校1年生だった18年10月、アルゼンチンで開催されたユース五輪で男子個人総合、種目別ゆか、つり輪、平行棒、鉄棒と5冠を達成して脚光を浴びたが、実はこのときも大会までの道のりは険しかった。5月のユース五輪選考会の1カ月前に左足首を疲労骨折していたが、どうにか試合に間に合わせて、わずか1枠しかない代表の座を手にしていたのだ。
周囲の人々は北園の「目標に向かってまい進する力」は図抜けていると口をそろえる。清風高校時代の2年先輩である三輪哲平(順天堂大学3年)は、「自分がオリンピックに出てやるんだという意志が立ち姿から伝わってくる。そこが他の選手とは違う。高校時代は僕の方が成績も上だったが、僕の良くないところも率直に言ってくれる気の強い後輩だった」と語っていた。その三輪はNHK杯4位。北園と同じく、6月の全日本種目別選手権で代表入りを目指す。
東京五輪団体メンバー入りへの争いは激しい。三輪を含め、ライバルたちは高い実力を持つ選手ばかりだ。だが、北園には絶望から何度でも這い上がってきた闘志がある。回復を早める若さもある。自分を信じる力がある。
ベストを尽くしたその先にミラクルが待っているかもしれないのがスポーツである。18歳の北園は既にそれを知っている。