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「ボキボキって」大ケガの北園丈琉18歳に内村航平からの電話が鳴った 「それで『頑張ろ』っと思いました」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO SPORT
posted2021/05/22 11:00
内村航平も一目置いている北園丈琉(右)の、五輪への最後の挑戦が間もなく始まる
「多分びっくりしたんでしょうね」
内村も直電の経緯を語った。内村によると、電話番号は以前から交換し合っていたというが、実際に掛けたことはなかった。LINEでもつながっていたが、こちらでも連絡したことはなかったという。
ただ、北園は以前から気にかけている存在。「連絡したほうがいいのかな」と思案しているタイミングで、北園の指導者である清風高校の梅本英貴監督から「丈琉に電話してやってくれないか」と連絡がきたのだという。
内村によると、電話に出た北園は10秒ちかく沈黙していたそうだ。
「今までLINEもしたことないから多分びっくりしたんでしょうね。でも、僕が電話したからどうというより、ここまで来られたのはあいつの力。あいつの立て直しの力。でも、丈琉がそう言っているなら少しでも力になれたかな」
「内村二世と言われてますけど、あれは違うかな」
内村は北園に一目置いているようだった。さかのぼって、全日本選手権の予選が行なわれた4月16日のこと。内村は北園について聞かれると、一通り感想を述べた後にこう付け加えていた。
「1つ気になっていて……。内村二世と言われてますけど、あれは違うかな。あまりプレッシャーをかけないでほしい。丈琉には伸び伸び体操をやってほしいです」
言葉を選びながら話し、最後に「ニ世というのは、うちの子どもだけですからね」と言って笑みを浮かべた。その様子に、日本のホープである北園を思いやる気持ちがさらににじんだ。
北園は4月の全日本選手権決勝でけがをしたのが最終種目だったことが幸いし、6位でNHK杯に進み、演技の難度を大幅に落として挑んだNHK杯を9位でフィニッシュした。団体貢献度による東京五輪の代表入りをするための最低条件は「NHK杯10位以内」。その基準をクリアしている。
最終選考会となるのは6月5、6日の全日本種目別選手権(群馬・高崎アリーナ)。跳馬を除く5種目で出場資格を持つ北園は、「ゆか、あん馬、平行棒、鉄棒が大事になってくると思う。これまでにもけがを乗り越えたことはある。残り3週間でできるだけの準備をしてきたい」と最後まで可能性を求めていく決意をあらためて示している。