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「デートに2000円の時計でいきました」イマドキの若手サッカー選手は高級車や時計に興味がない? “海外組”22歳FW原大智に聞く
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/05/23 17:01
2月にFC東京からクロアチアに移籍した原大智(写真はFC東京時代)
「FC東京に同年代の選手が7、8人いて、車を持ってないのは僕を含めて2人だけでした。若いときからいい車に乗る選手は多いので、今でもサッカー選手にとって高級車は夢の1つだと思います」
つまり原は特殊例なのだが、Jリーグの下部組織で純粋培養された“生え抜き”で(FC東京のジュニアユース→ユース→トップ昇格という王道を歩んだ)、将来の日本代表エース候補と言われる若者が「車なし・時計なし」というのは、時代の何かを反映しているように思う。
「サッカーはスマホで」「幼馴染をクロアチアに連れてきた」
もはや物欲のなさは、ミニマリスト(最小限の持ち物で生きることを信条とする人)級だ。FC東京時代、テレビも持っていなかった。
「テレビは見ないですね。寮の部屋にテレビを置いてませんでしたから。サッカーはスマホで見ます。クロアチアに来てからiPadをサッカー観戦用に買ったものの、これまでの癖で相変わらずスマホで見ています」
車も時計もテレビも買わない――。いったい何にお金を使うのだろう?
答えは「仲間との冒険」にあった。
「幼稚園が同じで、小学校のときに同じチームでプレーし、中学で同じクラスだった幼馴染がいるんですね。まだ大学生なんですけど、僕が雇ってクロアチアに連れてきました。ビジネスパートナー兼、身の回りのサポート役という感じ。基本的に僕が練習に行っている間に食事をつくってもらい、それ以外のときは2人で一緒につくっています」
いくら将来の日本代表候補とはいえ、選手としての成功が約束されたわけではない。幼馴染にとっても大きな決断だったはずだ。だが不思議とそういう重苦しさは感じられない。
「去年、コロナ禍でJリーグが中断しているとき、僕が海外へ行きたいという話を彼にしていて、もし良かったら一緒に行こうと声をかけていた。彼もサッカーをやっていたのでサッカービジネスに興味があり、海外での生活にも憧れていた。大学もリモートで授業を受けて卒業できるということで、彼が自分自身で決断した。僕が無理やり連れてきたわけじゃないですよ(笑)。2人で楽しんで生活しています」
もしかしたらこれも特殊例かもしれないが、彼らにとってはお金より、いかに仲間と楽しく冒険するかの方が大切なのだろう。
「インスタはあえて見ない」
最近、原はデジタルネイティブ世代とは思えない新習慣にトライしている。
「SNSの断捨離」だ。
「すでにTwitterとは距離を置いていたんですが、最近インスタも見ないようにしている。インスタってうまくできていて、見ると止まらないじゃないですか。でも、あまりに見すぎると、自分のことを考える時間とか、振り返る時間がなくなってしまう。自分より他人を見ていたら成長できない。インスタの運営は幼馴染に任せ、僕は見ないようにしています。
もちろん『誰かからリプライが来てるかも』とか気になるんですが、その誘惑さえ乗り越えたら、なんの不便もないですよ」
日本サッカーは「努力の仕方が間違っている」
ここまでミニマルな生き方をしていると、選手としての野心までないように感じられるかもしれないが、それは誤解だ。
原の目標は、ギラギラ系の本田圭佑や長友佑都と同じように尖っている(詳しくはインタビュー前編を参照)。