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岡崎慎司“奇跡のレスター5年後”の今も絶賛の声 「予想外のヒーロー」「シンジは過小評価されている」【現地取材】
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byGetty Images
posted2021/05/17 11:01
献身的なプレーが目立ったレスター時代の岡崎慎司だが、要所でゴールを陥れている
当時のレスターはチーム予算がリーグ最少規模で、前年度の順位も下から数えた方が早い14位。開幕直前にナイジェル・ピアソン監督が更迭されたこともあり、英ブックメーカー「ウィリアム・ヒル」を含めた大手3社が、「レスター優勝」のオッズに5001倍の超高配当をつけていた。
「エルビス・プレスリーが生きている」よりも高倍率
なお、同倍率に設定されていた賭けは「真冬の12月25日のクリスマスに、英国でこの年の最高気温を記録する」「ネス湖の怪獣ネッシー、もしくは雪男イエティの存在が確認される」といったもの。「実はエルビス・プレスリーがまだ生きていた」のオッズが2001倍だったから、ようは「優勝なんて夢のまた夢。絶対に不可能」と見られていたわけだ。
選手たちの顔ぶれを見ても、開幕前の時点で世界的に名が知られていた者はごく僅かだった。強いて言えば、マンチェスター・Uの伝説的GKピーター・シュマイケルを父に持つカスパー・シュマイケルと、チェルシーでプレー経験のあったロベルト・フートぐらいだろうか。その両者も当時は鳴かず飛ばずで、チームとしては「プレミア残留」が最大の目標だった。
BBCも「予想外のヒーロー」と岡崎を称賛
ところが、である。リーグ8部から「成り上がり根性」でのし上がったジェイミー・バーディーがゴールを量産すると、レスター加入前はフランス2部の無名選手だったリヤド・マフレズ(現マンチェスター・C)が切れ味鋭いドリブルで決定機を演出。この年にフランスからやって来たばかりのエンゴロ・カンテ(現チェルシー)が中盤底で守備を引き締めれば、下位クラブばかりを渡り歩いたマーク・オルブライトンがサイドを上下動して活力を注入した。
そんな雑草集団は「あれよあれよ」という間に順位表を駆け上がり、勢いそのままタイトルを掴んだ。
その歓喜の中に、日本人の岡崎慎司がいた。ポジションは4-4-2の2トップの一角。豊富な運動量で前線から守備をこなしながら、チャンスと見ればゴール前に突っ込み、泥臭くゴールを狙った。先述した英BBC放送の動画では、岡崎を「予想外のヒーロー」と褒め称えていた。
英高級紙のサッカー主筆も高く評価している
では、現地識者やレスターサポーターは、岡崎をどう評価しているのか。戴冠から5年が経った今の思いを聞いた。
「シンジ(オカザキ)がいなければ、あのリーグ優勝はなかったと思う。非常に重要な選手だった」と振り返るのは、レスター在住のジョナサン・ノースクロフト記者である。英高級紙サンデー・タイムズでサッカー部門の主筆を務め、レスターのリーグ優勝をまとめた『フィアレス(大胆不敵)』という本も上梓した同記者は、以下のように言葉をつないだ。