炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ森下暢仁に“2年目のジンクス”はないのか? 甘いマスクに隠した“知られざる苦悩”「あの日に戻れないかな」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2021/05/10 17:02
力投する広島先発の森下暢仁投手
「自分が投げて試合が動く。自分が一歩引くと、チームも引いてしまう。攻めるところは攻める姿勢を見せないといけない」
投手のマウンド上での姿が、試合展開を映し出す。森下は、勝利のために試合をつくることが先発投手にとって、最低限の使命だと感じているのだろう。唯一クオリティースタートにならなかった阪神戦の投球すら受け入れられない。1カ月近くたった今も、「あの日に戻れないかな」とこぼす。
森下の本領は“ピンチでこそ”発揮される
簡単に消化しないからこそ、考える、動く、成長する。順調に滑り出した1年目とは違い、2年目の今年は苦しみながら、悩みながらも、登板を重ねるごとに新たな引き出しを増やしていった。
付け加えると、先発投手の責任投球回といわれる5回を持たずに降板した登板はプロ入り後、昨年9月4日DeNA戦の1度しかない。
本調子でないことは被本塁打数にも表れている。6被本塁打はすでに昨季と同じ数となった。本人も「点の取られ方がよろしくない」と自覚する。
「ホームランって、野手はどうしようもできない。勝手に点を取られているみたいになっているので、そこはどうにかしたい」。理由もまた、森下らしい。
2年目の苦しみを示す被本塁打の詳細を見ると、6本すべて走者なしか、走者一塁で打たれたもの。プロ入り1年目の昨季浴びた6本塁打も同様で、プロではまだ得点圏で1本も本塁打を打たれていない。本塁打に限らず、得点圏での被打率はわずか8分3厘。走者を背負って、森下の本領は発揮されるのだ。