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ダルビッシュと相棒カラティニ「お互いにすごく信頼できています」相思相愛バッテリーが制した“4分間の心理戦”
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byGetty Images
posted2021/05/08 17:04
ジャイアンツ戦で見せたスリリングな攻防は相棒カラティニとの相性の良さを再認識する時間だった
4回1死走者なしで対峙したベルトに速球一辺倒で挑んでいるが、ダルビッシュはその意図を明確にした。
「(序盤は)カット、スライダーにちょっと合っていた。凡打でも嫌な感じがあるなと思ったので、カーブやスプリットを入れたり初球にツーシームも投げたりしました。ベルトに対して、急に全部速球系でいったのは、相手ベンチにも見せるためで、途中からちょっと“かき回したい”というのがありました」
縦に変化する97マイル(約156キロ)のツーシームを膝元に決める5球連続の速球勝負には、敵のベンチを欺くため、最も効果的な強打者を見せしめにする狙いがあった。次打席を待つ打者の観察眼と、攻略の糸口を探すコーチの炯眼はかすみ、ダルビッシュは2019年9月22日のカージナルス戦以来となる12奪三振を記録した。
輝きを引き出す捕手の存在
多彩な球種を誇り、その切れを“驚愕”の文字で形容する、いわば投球の上澄みに焦点を合わせたダルビッシュの話題は豊富だが、それとは別の楽しみ方もある。
今季最多の107球を投げた件のジャイアンツ戦後、ダルビッシュはこう言った。
「体力的には問題はなかったです。けれど、ドジャースもジャイアンツもいいチームなのですごく疲れます」
4月23日のドジャース戦は、絶対封じを掲げて挑んだ3番ジャスティン・ターナーとの秀逸な「9球」勝負が印象に残るが、4分にも及んだ“野球知の攻防”もカラティニとの共同作業で制している。
スティーブ・カールトンにはティム・マッカーバーがいた。グレッグ・マダックスにはチャーリー・オブライエンがいた。ティム・ウェイクフィールドにはダグ・ミラベリがいた。好投手には必ず、輝きを引き出す捕手がいた。
ダルビッシュ有には、ビクター・マニュエル・カラティニがいる。