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37歳直前の“戦力外通告”に引退がよぎったが… 42歳森岡薫が給与未払い5カ月でもフットサルW杯に執念を燃やす理由
posted2021/05/09 17:02
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Daisuke Nakashima
「ずーっと名古屋でやっていて、結果も出していたのに。その年の優勝の決勝ゴールを決めたのも自分だし。本当に活躍は変わらずだったんですけど、急にGMから『来季は契約しない』って言われて。頭、真っ白になりました」
追い打ちをかけるように、直後にはじまったAFCフットサル選手権では準々決勝で伏兵ベトナムにまさかの敗戦。ワールドカップ出場権のかかった5位決定プレーオフでもキルギスタンに足をすくわれ、日本は4大会ぶりにワールドカップ出場を逃してしまう。
「正直、選手としての引退を考えました。初めてですね、本当に辞めようと思ったのは。それくらいダメージが大きかった」
この時点で37歳を迎えようとしていた。すぐに4年後を見据えることは難しく、目標を見失った森岡は現役引退を考えた。
「辞めていたら後悔していたんだろうな」
しかし、森岡にはまだ現役を続けるべき理由があった。
「どうしていくべきか家族ともいろいろ話をして、考え直して。多分、辞めていたら後悔していたんだろうな。あそこで引退していたら名古屋の10連覇を阻止できなかったので」
打倒名古屋。それは不本意な形で退団を強いられた森岡にとって大きなモチベーションとなった。
「ちょうど中国からオファーがあって、名古屋より断然いい額を出してくれた。『もういいや、海外でやるわ』ってなっていたんですけど、その後すぐ日本代表合宿があったせいか、すぐに頭を切り替えられたんですね。それでちょうど名古屋で合宿だったので、GMをホテルに呼び出したんですよ。ちょっと話したいので来てくださいって」
そこで森岡は、名古屋のGMに向かってこう宣言した。
「僕は来季、日本に残ります。名古屋の10連覇は僕が阻止しますから。またリーグで会いましょう」