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40歳で異例の最高峰スペイン1部初挑戦… フットサルのレジェンド森岡薫は今、何を?<独占インタビュー>
posted2021/05/09 17:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Daisuke Nakashima
フットサルに詳しくない人でも、森岡薫の名を一度は聞いたことがあるのではないか。
Fリーグ創設初年度から9連覇を果たした名古屋オーシャンズの得点源として活躍し、日本代表のAFCフットサル選手権優勝、初のワールドカップ16強入りなどにも貢献してきた、日本フットサル界の「キング」と称される男である。
その森岡が昨年1月、何と40歳にして世界最高峰と言われるスペイン1部リーグに移籍した。
40歳。普通なら現役を続けているだけで称えるべき年齢である。実際、1979年4月7日生まれの森岡はリーグの最年長プレーヤーで、同年生まれはゴレイロで2人いるだけだ。
40代で世界最高峰リーグ移籍は異例すぎる
移籍したオパルロ・フェロルはフットサル日本代表ブルーノ・ガルシア監督の地元クラブで、加入当時の監督は以前ブルーノと共にベトナム代表を指導していた。
森岡をよく知る2人の存在がスペイン移籍の決め手になったとはいえ、40代で世界最高峰のトップリーグに初挑戦する選手など前代未聞のことだ。
「ここでのプレーをずっと夢見てきた。この歳まで叶わなかったけど、まだここでプレーするに値する貢献ができると思う。難しい挑戦だと理解しているけど、不可能だとは思わない。期待に応えるべく全力を尽くしたい」
そんな決意表明を行なった入団会見の数日後、森岡は慌ただしくリーグデビューを迎えた。強豪バルセロナとのアウェー戦前日に移籍手続きが完了したため、急遽招集されることになったのだ。
「試合が土曜日だったので、チームは金曜の昼に出て、僕は残ったんですよ。まだ手続きもできていなかったので。そしたら監督から電話がかかってきて、『いいニュースと悪いニュースがある。いいニュースはバルサ戦に出られること。悪いニュースは当日移動』と言われて(笑)」
まだ時差ボケも残る中、早朝のフライトでバルセロナ入りした森岡は、その日の夜にデビュー戦のピッチに立った。