スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
37歳直前の“戦力外通告”に引退がよぎったが… 42歳森岡薫が給与未払い5カ月でもフットサルW杯に執念を燃やす理由
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima
posted2021/05/09 17:02
42歳の森岡薫に、W杯メンバー入りの吉報は届くのだろうか
「いろんなことをプラスに考えるために、このシーズンを迎えているのかなと思います。いいシーズンではない、全てにおいて。でも、トンネルの先には光があることを信じてやっています。道のりが厳しくなればなるほど、ゴールが近づいてくる。物事をそう見るようにしているんですよね」
「監督は分かっていると思うんです」
とはいえこのような状況下、現実的に見てワールドカップに招集されるのは難しいのではないか。そんな懸念をほのめかすと、森岡ははっきりとこう返してきた。
「僕はそういうふうには見てはいない。点取ってないし、勝ってもいないからワールドカップは厳しいよねって見られるかもしれないけど、日本とスペインのレベルは一緒じゃないから。監督は分かっていると思うんです。もちろん点も決められて、勝利にも貢献できるに越したことはないので、そこは言い訳なくやっていきたいですけど」
4月21日、AFCはパンデミックの影響で予選が行えなかったワールドカップにイラン、日本、ウズベキスタンの3カ国がアジア代表として出場することを発表した。並行して日本では16日間に渡る日本代表候補の強化合宿を実施。9月の本大会へ向けた動きが本格化しはじめた。
「もう一度、日の丸を背負いたいんです」
その傍ら、同月に42歳の誕生日を迎えた森岡は、苦しい状況下でもポジティブな思考を保ちながら、ワールドカップを見据えてスペインでの挑戦を続けている。
「自分の子供は2人ともサッカーをやっているんですけど、2012年はまだ1歳で、もう一人は生まれていなくて、何も分からない状態だった。その子供に『パパもワールドカップ出て欲しい』って言われたんですよね。それが僕にとってはすごく大きい。それに2016年の悔しい気持ちを洗い流すには、ワールドカップに出るしかない。まさかコロナの影響で1年延びるとは思っていなかったですけど、それでも出るって思いは誰よりも強いと思っています」
泣いても笑っても、今年がラストチャンス。果たして9年ぶりのワールドカップを目指す森岡の思いは実現するのだろうか。
「今はもう、やっていくしかない。もう一度、日の丸を背負いたいんです」