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【天皇賞・春】福永祐一の“ある決断”がワールドプレミアを優勝に導いた 「もう少しいいスタートをと考えていましたが」
posted2021/05/03 11:45
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
混戦から抜け出したのは、長距離経験とGI実績のある超良血馬だった。
第163回天皇賞・春(5月2日、阪神芝外→内回り3200m、4歳以上GI)で、福永祐一が手綱をとった3番人気のワールドプレミア(牡5歳、父ディープインパクト、栗東・友道康夫厩舎)が優勝。2019年菊花賞以来となるGI2勝目をマークした。
「考えていたより早く外に出す形になりました」
スタート直後はディアスティマとジャコマルがハナを争うかに見えたが、最初のコーナー手前で、ポジション争いは決着。先頭はディアスティマ、1馬身ほど後ろの2番手がジャコマル、3番手がカレンブーケドール、4番手にシロニイ、さらに1番人気のディープボンドといった馬順で、外回りの3、4コーナーを回って行く。
クリストフ・ルメールが騎乗するアリストテレスがそれら好位グループの2馬身ほど後ろ。福永のワールドプレミアは、さらに2馬身ほど遅れた中団の内で折り合いをつけている。これがテン乗りだった福永はこう振り返る。
「これまでワールドプレミアと一緒にレースをしていましたし、調教にも跨って、特性はつかんでいました。もう少しいいスタートを決めて、ある程度いい位置で競馬するのがベストだと考えていたのですが、上手くスタートを切ることができませんでした。そのあとのリカバリーは、内枠ということもあり、非常に上手くいきました」
1000m通過は59秒8。先頭から最後尾まで15馬身ほどと縦長になった馬群が示しているように、3200mの長距離戦にしては、かなり速い流れになった。
17頭が正面スタンド前を通過し、1、2コーナーを回って行く。
向正面なかほどで、福永は、ワールドプレミアをやや外に持ち出した。
「ウインマリリンが進出して来たので、そのタイミングである程度ポジションを確保しておかないと、動きたいときに動けなくなるだろう、と。考えていたより早く外に出す形になりましたが、馬はよく応えてくれて、長くいい脚を使ってくれました」
ここが勝負の分かれ目となった。