日本サッカー未解明問題ファイル「キリスト教と神のこと」BACK NUMBER
鎌田大地の言葉と長谷部誠の助言に共感しつつ考える… 日本とドイツ(欧州)で違う「自己主張・自己責任・専門性」とは
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJMPA
posted2021/04/30 17:02
日韓戦でゴールを決めた鎌田大地だが、興味深いコメントを残している
風間八宏さんに話を聞いて考えたこと
◆専門性
以前に風間八宏さんに話を聞いた際、後にバイエルン・ミュンヘンやドイツ代表で活躍するオラフ・トーンのユース時代の話をしてくれたことがある。
「彼はもうすでに10代にして、自分がどんな人間で、どんなプレーヤーで、何が特徴なのかはっきりと言い切っていた」
また05年にサッカー専門誌で「奥寺康彦-チャ・ボングン対談」の執筆を担当した際、チャ氏からこんな話が出てきた。
「ドイツでは左足の苦手な子には無理して教えないんですよ。『右足のスペシャリストになれ』と教える。それで試合に出ていくことで多少は左足のことも考えるようになる、という発想です」
ちなみに05年にパク・チソンがマンチェスター・ユナイテッドでデビューを果たした際(チャンピオンズリーグ予備予選)、現地のアナウンサーは「この選手は右利きか左利きかわからない」と口にしたという。
もっとも近年、フランスのアカデミーのエリート教育などでは「逆足も教える」という流れがあるようだが。
喋らずとも「何者か」を伝えきる鎌田のすごさ
これら3つの話がキリスト教文化圏の「神と繋がった尊厳のある個」と繋がる。
本連載は、これを「最新の海外組」などの取材を通じて実証していこうではないかという試みだ。
ちなみに筆者自身がドイツで試合に出るために考えていたのはこういうことだ。
「俺の左足こそ一番すごい。だから全部俺にボールを出せ」と単語を繋いで言いまくり、雰囲気を発してチームメイトに伝えまくる。
チャ・ボングン氏のいう「逆足を教えない」というのは本当で、当時の10部のアマチュアリーガーたちはほとんど蹴れなかった。筆者は日本の部活で「両方蹴れるようになれ」と先生に教わり、自分の個性などは考えずそれに従った。だから蹴れたのだ。ちゃんとドイツ語も喋れないし、とにかく「左足でめちゃくちゃ蹴る自分」を伝えまくろうと決めた。
そう考えると、冒頭の鎌田の姿勢はホントにすごいことだと思う。ハキハキと喋らないで、「自分が何者か」を伝えきるなんて……欧州組に何が起きているのか。この点からも論を展開していきたい。
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