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監督も絶賛の“成熟の投球”で初勝利、ダルビッシュ有が心待ちにするエース対決「カーショーの球を打席で…」
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byAFLO
posted2021/04/16 06:00
12日、今季3戦目の登板で初勝利を挙げたダルビッシュ。開幕戦こそ5回途中で降板したが、2戦目以降は安定した投球を見せている
日米を問わず、開幕投手は大黒柱であり、「チームの顔」。勝敗などの数字以上に、チーム全体を支え、信頼されるだけの質を求められるのが、真のエースでもある。
「自分でいいのかなっていう気もあるけど、期待はしてもらっていると思うので、このチームに入れてもらえているということをちゃんと感謝して、日々野球に打ち込んでいきたいなと思います」
レンジャーズ時代以来、年間を通して温暖な気候のサンディエゴには、好印象を持ち続けていたと言う。
「いつかサンディエゴで、ちょっとだけでもプレーしたいなと思っていた時があったので。神様が自分のキャリアの最後にご褒美としてくれたのかなと思うと、ちょっと感慨深いものがあります」
「あと何年できるか」、「キャリアの最後」などの言葉の真意はともかく、心身共に成熟した感のある今のダルビッシュに、「個」へのこだわりは、さほど見えてこない。
最高レベルの勝負を楽しむ境地
移籍後初勝利後の次戦は4月17日(日本時間18日)、古巣ドジャースが相手で、サイ・ヤング賞3回の左腕クレイトン・カーショーと、初めて投げ合う可能性が高い。同じテキサス州ダラス近郊に自宅を持つこともあり、オフの自主トレ期間には、一緒にキャッチボールやトレーニングを行う親しい間柄としても知られてきた。
直接対決への意気込みを聞かれたダルビッシュは、笑みを浮かべつつ、やんわりと別の視点に言い換えた。
「何度もキャッチボールはしていますが、カーショーの球を打席で見るのが楽しみです」
ガムシャラに投げていた若い時代であれば、おそらく、もっと直接的な、別の表現になったに違いない。だが、34歳になった今は、記録に残る勝敗へのこだわりではなく、同地区の宿敵の絶対的なエースと同じ舞台で戦えることを、素直に心待ちにしているようだった。
世界最高レベルの技術に、メンタル面の成熟。
新天地でも、地に足の着いたダルビッシュが、どんなシーズンを送るのか。楽しみは尽きない。