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監督も絶賛の“成熟の投球”で初勝利、ダルビッシュ有が心待ちにするエース対決「カーショーの球を打席で…」
posted2021/04/16 06:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
AFLO
ブラウンとイエローを基調としたユニホーム姿には、既に長年にわたって袖を通してきたような、落ち着き払った雰囲気が漂っていた。
4月12日、敵地ピッツバーグでのパイレーツ戦。今季3戦目で初勝利を挙げたパドレスのダルビッシュ有には、移籍後初白星の個人的な余韻や喜びより、無事に責務を果たした充実感が浮かんでいた。
「今日は、1アウトでも多く、できれば7~8回は行きたいと思っていました。連戦が続くので、早い回で降板するのだけは避けたいと思っていました」
昨年12月、カブスからトレードで移籍した立場であれば、通常、シーズン1勝目の結果を求めて、マウンドに上がっても不思議ではない。先発投手として、勝ちたい気持ちは、常に変わらない。ただ、この日のダルビッシュは、自らの成績ではなく、純粋に、長いイニングを投げることだけに集中していた。
というのも、その前日、先発左腕エイドリアン・モレホンが、1回途中に故障で緊急降板。残りの8回1/3を救援陣6人がフル稼働し、完封リレーで競り勝った直後だっただけに、ダルビッシュへの期待は、まさに「1アウトでも多く」投げて、救援陣の負担を軽減することだった。
監督も絶賛するエースの仕事
結果は、7回を3安打1失点。理想的な95球でまとめ、6−1と5点リードの余裕を維持した状況で、マウンドを譲った。試合後のジェイス・ティングラー監督が、「まさしく我々が望んでいた登板だった」と絶賛する投球だった。
4月1日。ダルビッシュは、移籍1年目にもかかわらず、開幕投手を任された。レンジャーズ時代の2017年に経験し、カブスの主軸として、サイ・ヤング賞の記者投票で次点にランクされる好成績を残したものの、パドレスの一員として実績を残したわけではない。
その一方で、ダルビッシュは開幕前の時点から大役への思いを明かしていた。
「あと何年、野球ができるかも分からないし、あと何球投げられるかも分からない。もしかしたらラストチャンスになるかもしれない」