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井上尚弥が28歳に 名プロモーターも驚いた「一見すると韓国のポップシンガー」な好青年が“怪物”に豹変する瞬間
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2021/04/10 06:01
本日4月10日は井上尚弥の28回目の誕生日だ
「一見するとまるで韓国のポップシンガーのよう」
この落差も怪物の魅力の1つなのだろう。普段から常に特別なオーラを感じさせるタイプではなく、昨年のラスベガス上陸時も、ある現地メディアからは「一見するとまるで韓国のポップシンガーのよう」と形容されていた。語り口は優しく、親しみやすさを感じさせる。そんな好青年がリングに上がると豹変し、ダイヤモンドでできたような左右の拳を振り回す。その瞬間にとてつもない輝きを放つ。
自然な形でギャップのある人間は周囲を惹きつけるもの。屈託のない笑顔で豪快なKOを連発していた頃のマニー・パッキャオ、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)らと共通するものを井上は確かに持っている。あくまで対戦相手に恵まれることが条件になるが、アメリカでもスターになる要素を秘めているのは間違いない。
ダスマリナス戦「挙行されること自体はもう100%」
次戦は6月19日、再びラスベガスでマイケル・ダスマリナス(フィリピン)とIBF指名戦を行うことが確定的とされている。当初は日本開催予定だったが、外国人は日本入国の際に2週間の隔離が義務付けられるという制度が障壁になって変更となった。
実は筆者がこの試合に関してボブ・アラムに取材アポを取ろうとしたところ、トップランクの関係者からストップがかかった経緯がある。つまりさらなる変更の可能性もあるということ。ただ、ダスマリナスのプロモーターであるショーン・ギボンズ氏は「挙行されること自体はもう100%」と述べており、軌道修正があるとしても日程くらいのものか。遠からず細部が煮詰まるという話だけに、井上の初夏のベガスリング登場は近いうちに正式発表されるはずである。
ここで断っておくと、ダスマリナスは一線級の挑戦者とはとても言い難い。28歳のフィリピン人サウスポーは戦績こそ30勝(20KO)2敗1分と見栄えが良いが、トップレベルとの対戦はほぼゼロ。日本でのスパーリング経験も豊富であり、ミステリアスな不気味さがある選手でもない。
井上が目標に掲げる4団体統一戦に向け、IBFから指名戦として義務付けられたがゆえに消化されるという以上のカードではない。そんな一戦では、井上が勝つのは基本として、何よりも内容が問われることになるだろう。