28歳に求められる「期待を超越する強さ」

「バンタム級であれほど強烈なパワーを持った選手は見たことがない。バンタム級にも強打者はいるが、通常はあそこまでのダメージは与えられない。しかし、井上にはそれができてしまうんだ」

　マロニー戦時、そう述べていたアラムの期待に応えるだけの豪快なファイトを今回も見せられるかどうか。ESPNの視聴者を喜ばせ、今年中に挙行が期待されるカシメロ、あるいはWBC王者ノルディーヌ・ウバーリ（フランス）とノニト・ドネア（フィリピン）の勝者との統一戦に向けて勢いをつけられるかどうか。そして、試合後は素顔に戻り、チャーミングな笑顔でファンを魅了できるか。

　井上が“特別な選手”であることはもう関係者の誰もが認識しているだけに、今回の期待値はより高くなる。それでもトップランク/ESPNという強力タッグのプッシュを受けるようになった今、安定した形でその高いハードルを超えていかなければいけない。

　ゴロフキン、ロマチェンコ、そしてパッキャオ。エリート外国人王者たちは誰が相手でも人々の期待を超越する強さを見せ続けることで、アメリカでも世界最高峰の評価と知名度を築いていった。これから先、28歳という脂が乗り切った年齢の井上に求められるのも、そんな豪傑たちに匹敵するパフォーマンスなのである。

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