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井上尚弥が28歳に 名プロモーターも驚いた「一見すると韓国のポップシンガー」な好青年が“怪物”に豹変する瞬間
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2021/04/10 06:01
本日4月10日は井上尚弥の28回目の誕生日だ
おかげでアラムが年をとっても、トップランクは米国内で最大級の力を保ってきた。特に選手育成に定評があり、これまでオスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー(ともにアメリカ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、そしてマニー・パッキャオ(フィリピン)といった多くの選手たちをスターダムに導いてきた。そんな百戦錬磨のエグゼクティブたちの表情が、あれほど輝いた夜は最近では記憶にない。
それゆえ、この日のリング上で井上が放ったどんなパンチより、試合後のリングサイドの喧騒の方が象徴的に感じられたのだった。
リング上の迫力と、リング外の爽やかさ
リングから降りた瞬間、 モンスターが普通の若者の顔に戻ったのも印象的だった。MGMグランドガーデンの控え室に戻り、こちらの質問に答える頃には、ファイト中に井上の身体を包み込んでいた“闘気”は綺麗に消失していた。
「(カシメロは)黙らせたいっていうのもあるんですけど、ほっとけですよね、正直うざすぎ。だったらやらなくていいよ、というところまでエスカレートしすぎている。試合をする上での挑発を超えているので、相手にしたくないですね。(ただ、)一番は試合で黙らせたいですけどね……」
盛んに挑発してくるWBO王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)に関して尋ねたときの、井上のそんな屈託のない話し方と笑顔を今でも鮮明に思い出すことができる。
リング上の迫力と、リング外の爽やかさ。ジムメイトの元日本スーパーライト級ユース王者平岡アンディは「尚弥さんはボクシングをしている時と、そうでないときの切り替えが凄いんです。本当に全然違う人みたい(笑)」と述べていたが、スイッチをオフにしたときの姿がここで垣間見えたような気がした。