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新設“ブリッジャー級”にボクシング関係者からも疑問が… 勝っても「ヘビー級で王者になれなかった人」扱いにならない?
posted2021/04/03 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
WBCがヘビー級とクルーザー級の間に新たな階級、ブリッジャー級を創設した。昨年11月にいきなり発表された新階級だが、いまのところ他団体が追随する動きはない。一方でWBCはやる気を見せてランキングを作成、海外では6月に王座決定戦が開催されるというニュースも報じられた。ブリッジャー級について考えてみる――。
まずはブリッジャー級とは何かを説明しよう。WBCが新設した階級の名称で、名前の由来は2020年7月、野良犬に襲われた妹を助けるために犬と格闘し、妹を救う代償に90針も縫った当時6歳の勇敢な米国人少年、ブリッジャー・ウォーカーくんから名付けた。
近年のヘビー級選手は大型化している
体重は200ポンド(90.72キロ)から224ポンド(101.60キロ)。ちょうどヘビー級とクルーザー級の間に位置している。WBCが掲げる階級増設の理由は、近年ヘビー級選手の大型化が進んでいることだ。WBCは1950年代のチャンピオン、ロッキー・マルシアノが185ポンド、70年代のジョー・フレージャーが205ポンド、90年代のマイク・タイソンが218ポンドであるのに比べ、現WBC王者タイソン・フューリーの275ポンド、3冠王者のアンソニー・ジョシュアの240ポンドだとアピールする。
では体格差があると何が問題なのか。まずは体格差が開くことにより拮抗した試合が減るという心配がある。逆に言えばヘビー級でも体重差が少なくなれば、よりエキサイティングな試合が増える、という考え方だ。また、ボクシングが階級制スポーツであるのは公平性、そして安全面を考慮した上でのことであり、こうした理由も一定の説得力を持つ。“軽めのヘビー級”選手により多くのチャンスを与えるという配慮も大きな理由だろう。