攻撃だけでなく、ブロックとディグも堅かった。ブラジル人のレオナルド・カルバリョコーチが、チームに合わせて築いてきたブロックシステムが3年目で精度を増し、そのシステムに合わせて、元リベロの酒井大祐コーチがディグをしっかりと構築。ブロック本数は多くないが、ブロックのワンタッチやディグでチャンスを作り、それをスパイカー陣が高い確率で得点につなげた。

　昨季まで課題だったサーブも、柳田の加入や、個々のレベルアップによって向上し、「すべてがダントツ」になったのである。

　セットカウント3－0でファイナルに勝利し、主将の大宅は、誇らしげな笑顔でブランデージトロフィーを掲げた。

主将としてチームを引っ張ったセッター大宅　©︎V.LEAGUE

　だが実は今シーズン、サントリーは新主将の“やらかし”からスタートしていた。

ミーティングをすっぽかした新主将

　今季就任した山村宏太監督は、3年目25歳のセッター大宅を主将に指名した。その理由は、「大宅が人としてもプレーヤーとしても成長しないと、このチームの優勝はないと考えたから」。

　大宅自身も、「キャプテンをやりたいと思っていた。やったー、という気持ちだった」と喜んで引き受けた。こういうチームを作りたい、こんなことをやりたい、と山村監督に熱く語っていた。

　ところがーー。チームが始動する日のスタートアップミーティングを、大宅はすっぽかしてしまった。

「前の日の夜、1人でいろいろ考えてしまって。僕がキャプテンって、みんなにどう思われているんだろう？と。僕はバレーを離れるとチャランポランな部分もあって、そういうところも見られていたので、『そんなやつがキャプテンになっていいの？』って、絶対みんな反対してるよな、とか考えていたら……逃げちゃったんです」

　同期の選手や監督からひっきりなしに電話がかかってきたが、出なかった。その後、母からも電話があり、「ここで終わっていいの？」と諭された。

　ようやく冷静になり、「とにかく（山村）宏太さんに謝らないと」と、その夜、駐車場で待ち合わせた。当然キャプテンは降ろされると思っていた。

　しかし、山村はこう言った。

「一度裏切られたけど、でもお前を信じる。もう1回、みんながいいって言ったら、キャプテンやってくれ」

　監督に就任した時、山村は「選手に寄り添って、一緒に考えて、一緒に答えを見つける監督になりたい」と掲げた。いきなりその覚悟を試された。

　その覚悟と思いは大宅に伝わった。

「裏切っても、信じてくれたから、逆に宏太さんのことを信じられない部分がない。すごく人間が大きいな、こういう人に僕もなりたいなと思いました。今考えるとちっちゃいことですけど、とにかく周りの目が気になっていたんです。でも、僕が言うのも変だけど、一度逃げたから、逆にすごく覚悟が決まったし、キャプテンとしての気持ちも固まりました」

　翌日、大宅は選手たちに謝罪し、「もう絶対に逃げません。覚悟はできました」と宣言した。そこからのスタートだった。

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