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「もう絶対に逃げません。覚悟はできました」新キャプテンの“裏切り”を、山村監督はなぜ許した?【サントリー14年ぶりのVリーグ優勝】
posted2021/04/08 17:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
V.LEAGUE
約半年間に渡って開催されてきたバレーボールの2020-21V.LEAGUE は、4月4日にDIVISION1のファイナルが行われ、サントリーサンバーズが14年ぶりの優勝を果たした。
「サントリーさんは、今シーズン、すべてがダントツだった」
ファイナルで敗れたパナソニックパンサーズの深津英臣主将の言葉だ。4季連続でファイナルに進出した強豪パナソニックが、今季はレギュラーラウンドを含めサントリーと5回対戦し、全敗に終わった。深津はこう続けた。
「サーブ、トス、スパイク、それにパス(サーブレシーブ)も含めすべて。サーブは『またいいサーバーがいる』と打たれる前からすごく嫌だった。こちらがサーブで崩しても、セッターの大宅(真樹)がしっかりと(スパイカーに)託して決めてきますし、ちょっとでも緩いサーブを打つといいパスが返るし、スパイカーもみんなすごくいい。本当にダントツだったと思います」
中でも一番の武器は攻撃力だ。ファイナルでも65.8%のスパイク決定率を残し、最高殊勲選手賞に輝いたロシア代表ムセルスキー・ドミトリーの、身長218cmの高さと破壊力は異次元だが、大砲1人の力では長期のリーグは勝ちぬけない。
ミドルブロッカーの塩田達也や小野遥輝も攻撃力は高く、セッターの大宅はクイックを使うことにも長けている。特に同級生の小野とは、あうんの呼吸で、昨季は「僕の生命線は遥輝」と語っていた。
ただ、以前はその小野が相手にマークされて決まらなくなると行き詰まった。だが今季は違った。
ミドルブロッカー小野を“最強の囮”に
「今季は『じゃあ次』と考えられるようになった。相手のマークが厚くなって遥輝が決まらないなら、遥輝を使って、他の選手を活かせばいい。『ハイキュー!!』(の主人公・日向翔陽)みたいに“最強の囮”として、あいつを使えばいいやって、楽になりました」(大宅)
そう割り切れるのは、アウトサイドの決定力が上がったからだ。ミドルブロッカーを囮にすれば、今季はアウトサイドの2人が確実に決めてくれた。
海外リーグでプレーしていた柳田将洋が4シーズンぶりに復帰したことが大きい。またその対角の藤中謙也は、昨季までは高い守備力の一方、攻撃での存在感が薄かったが、今季は攻撃力も光った。今季はトスに高さを出して間を作ったことで、しっかりと相手ブロックを見て、持ち前の技術を存分に活かして得点できるようになった。
「マサさん(柳田)がいることと、謙也さんの攻撃の幅が広くなったことで、めちゃくちゃ助かっています。パスがどこに上がっても、常に(ムセルスキーを含め)最低3人は選択肢があるので」と大宅は語っていた。