濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
女優でレスラー・なつぽいが“白いベルト”中野たむ戦で見せた「呪い」の感情 泣き顔で連続ビンタ、水かけ、顔面蹴り...
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMasashi Hara
posted2021/04/08 11:00
なつぽい(右)はかつてタッグを組んだこともある中野たむへの複雑な思いを抱えながら試合に挑んだ
白いベルトに挑戦する理由は2つ
「スターダムは全員が主役を狙ってるし、全員が主役になれる力がある団体ですね。今のポジションに満足してる選手なんていないから、試合をしてもみんなあきらめない。アベンジャーズみたいな団体だなって」
その頂点の一つである白いベルトに挑むにあたって、なつぽいは個人的な感情を前面に押し出した。白いベルトに挑戦する理由は2つあるとし、1つは語らなかったがもう1つはチャンピオンがたむだからだと明かした。調印式では過去に2人で撮った写真を引き裂き、泣きながら“決別”をアピールしている。
「たむちゃん、他人に興味ないんでしょ。いつも自分のことばっかり。そうやってほしいものを手に入れてきたんだもんね。私にはそれができなかった」
たむは答えた。
「ほしいものは自分の力で手に入れる。何が何でもなりたい自分になる。それがプロレスラーでしょ。私はチャンピオンとして、あなたのずっと先を行くから」
「アクトレスをやめた時、裏切り者としか思えなくて」
“呪いのベルト”のチャンピオンとして、挑戦者のなつぽいが感情をさらけ出してくるのは大歓迎だった。「もっとドロドロした感情を持っているはず」とも語っていた。
「なつぽいはメチャ八方美人なんですよ。すっごい猫かぶってる。これはずっと根に持ってるエピソードなんですけど、私がアクトレスを退団するっていう連絡を入れた時に、なっちゃんは“たむちゃんの決めたことなら応援するよ、頑張ってね”って優しい言葉をかけてくれて。でもその後に雑誌では“中野たむとは2度と会うことはありません、許せない”みたいなことを言っていて。
ああ、本当はそう思ってたんだ、ドロドロした嫌な気持ちを隠して私と接してたんだなって。そういうのを今回、やっとぶつけてくれるようになったんですよね。2度と会わないって言ってたのに向こうから来てくれた」
アクトレスガールズを離れてからの4年で、立場を逆転させた自信もあった。それはなつぽいも感じていたことだ。調印式で「自分のことばかり」とたむを非難したが、それが強さなのだということも知っていた。
「たむちゃんは貪欲だし、自分のことを客観的に見れる人なんです。話題を作ることにも貪欲。その差がいま出てるんだと思います。前は、そんなたむちゃんの考え方が理解できなかった。子供でしたね。アクトレスをやめた時も、裏切り者としか思えなくて。今ならたむちゃんがどうしてアクトレスを抜けて、何を考えてスターダムで闘ってきたか分かる気がします」