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“イギリスのボーイ”オスプレイが飯伏からIWGP世界ヘビー奪取 「オマエたちがオレをモンスターに変えたんだ」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/04/06 11:00
IWGP世界ヘビー級のベルトを飯伏幸太から奪取したオスプレイ
オスプレイにとって感慨深かった飯伏との出会い
「やりたいようにやれ」とオスプレイは祖父に言われた。オスプレイの祖父はレスラーではなくボクサーだったが、心の優しい人だった、という。だが、勝負となるとリング上でも酒場でもどこでも容赦はしなかった。勝つためには何でもやった。
そんな血がオスプレイの体内にも流れている。エセックスでの少年時代はよくケンカをした。相手の手にはナイフが握られていることもあった。
オスプレイにとって飯伏との出会いは感慨深いものがあった。ともに成長してきた、と思える部分もある。その飯伏と「世界」の文字が加えられて新しくなったIWGPのベルトを争う。特別な思いと同時にオスプレイの中のモンスターが首をもたげた。
仙台では恋人にオスカッターを見舞い
それは非情なモンスターだ。勝つためには何でもやるモンスター。マネジャーとして新日本のリングに上がっていた恋人のビー・プレストリーに仙台ではオスカッターを見舞い、IWGP世界奪取に賭けた。
「世界一のレスラーになること、それが何よりも大事だ。この(ニュージャパンカップ)トロフィーを手にしても、世界一の勲章を手に入れたわけではない。IWGP世界ヘビー級のベルトこそが世界一の証だ。そうだろう? オレはベストでありたい。それがオレにとって何よりも意味のあることだ。だから今日(3月21日)、世界で一番愛する女性にオスカッターを食らわせないといけなかった。他の方法はなかった。付き合って5年、一緒に暮らしてきた。でも、もうどうでもいい。今のオレにはIWGP世界ヘビー級王座以外は興味がない」(オスプレイ)
こうしてオスプレイは彼女に別れを告げた。
「だから、世界で一番愛する人にもあんなことができるんだ。相手が飯伏ならなおさら一切容赦はしない。オマエは神なんかじゃない。でもオレだって悪魔でもなければ神でもない。ただ、オマエの本心というものが見えてこない。飯伏はニュージャパンの顔じゃない。新日本の顔はこのオレだ。4月4日、両国が楽しみだ。両国では、一度の負け(初来日)を除きずっと勝っている。運命に導かれて、このオレがIWGP世界ヘビー級王者に君臨する」(オスプレイ)
オスプレイはこの予言通りにIWGP世界王座を手にした。