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エディー解任騒動に“血の契約”を結ぶ選手が反論? 欧州の名将たちが試行錯誤する2023年W杯へのピーキングとは
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2021/03/31 17:00
優勝候補と目されながらも、シックスネーションズは5位で終わったイングランド代表。だが、指揮官エディー・ジョーンズはきっと“本番”に照準を合わせてくるはずだ
エディーHCが交わす“血の契約”
イングランドを率いるエディーHCは、4年サイクルの2周目を迎えた。日本代表の指揮官を退いてから、かれこれ6年となる。
序盤から取りこぼしが続いたシックスネーションズでは、心ないヤジが浴びせられたが、負けられないフランス戦を前に「だからこそ、勝てるのです。外野がうるさいときは、身内の言うことだけを聞いていればいいのです」と選手を鼓舞。モチベーターとしての手腕を発揮し、見事、接戦を制する原動力となった。
しかし前述の通り、今大会の結果は5位。世界最大の予算規模を誇るイングランドラグビー協会(RFU)は、「エディーHCの解雇もあり得る」と大会のレビューを始めている。
だが、そこは人心掌握術に長ける闘将だ。選手と“血の契約”を交わす。
日本代表HC時代とは違い、今は英語で直接コミュニケーションが図れるため、「ボス」と呼ばれるなど選手との距離も近い。「指導者と選手」という関係でありながら、オープンに話せる関係を重視している。これはイングランド代表に就任以降、エディーHCが意図して築き上げてきた関係と言える。
事実、不調に終わった今大会後、解任論がメディアを賑わせるなか、主力として重用されてきたLOマロ・イトジェは、「エディは本当の意味で特別なHC。誰よりもハードワークを重ね、選手との信頼関係を大切にし、チームのモチベーションを高める達人だ。このチームにとって、エディが最高のHCであることに何の疑いもない」と支持を表明している。
百戦錬磨の経験値「夏に向けて、頑張ります」
さらにエディーHCには実績がある。18年シックスネーションズで2勝3敗で5位という結果に終わっているが、その後チームを復調させ、19年W杯で準優勝を果たしている。「どんなスポーツにも、必ずチームの好調、不調の波というものは存在する」と常日頃から語っているエディーHCにとっては、今大会での一時的な不調も、その後の成長の為のプロセスの1つと捉えているのだろう。
一方で、ベテラン勝負師は素直に反省も述べている。このあたりのメディアコントロールも、エディーHCの巧みさが垣間見える。
「夏に向けて、頑張ります」
オフの間には他競技のスポーツ指導現場に出向いたり、外部の意外なフィールドからスポットコーチを連れてくるなど、徹底的な分析眼と、飽くなき探究心を併せ持つエディーHC。多少の入れ替えもあるはずの選手選考も含めて、夏に向けた「指揮官としての頑張り」は大いに注目されていくだろう。
「最終戦に負けた日の夜は、本当に悔しくて何も考えられない状態でしたが、次の日には頭を切り替えました」
欧州ラグビー最高峰で凌ぎを削る代表HCたちはどんな次の手を用意しているのか。2023年W杯まで目が離せない。