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戸塚優斗がスノーボードW杯V3達成 「弱かったことを実感できた」平昌五輪での“転倒”を糧に快進撃
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/03/28 11:00
コロラド州アスペンで行なわれたワールドカップ最終戦で優勝し、リラックスした表情を見せる戸塚
予選10位で決勝に進んだ戸塚は1回目で転倒。
続く2回目も、リップと呼ばれる壁のいちばん高い部分に体を打ってパイプの底に転倒。立ち上がることができず、担架で運び出されると、病院へ搬送された。
幸い、打撲で済んだが、結果は11位。望んでいたものにはほど遠い順位で大会を終えた。
時間を経て、感じたのは、オリンピック独特の空気だった。
「雰囲気にのまれていたなと思います」
4年に一度の大会を包むムードは、他の大会とひと味違った。そこで戦うには、メンタル面でまだまだ足りないと感じた。
メンタルだけではなく、技の違いも実感した。トップ争いをする選手たちにかなわないことを肌で感じた。優勝したホワイト、そしてホワイトと拮抗した勝負を演じた平野歩夢らとの、心と技両面での差を痛感させられた。
「弱かったことを実感できた大会」
そのひとことが、初めてのオリンピックにおいて、戸塚が受け取ったすべてを示していた。
コロナ禍にもブレなかった精神力
練習や大会、1つ1つ大切にしながら、レベル向上を心がけてきた。コロナ禍直前の昨年2月に行なわれた世界最古の大会USオープンで初優勝するなど、着実に結果で取り組みの成果を示した。
この1年は新型コロナウイルスの影響で、本来なら実施する夏場の海外雪上トレーニングができなくなるなど、練習環境の面でも影響を受けた。でも精神的に揺さぶられることなく、落ち着いて状況を受け止めながら、体幹を中心としたトレーニングに取り組むなど、やれる準備に力を注いだ。そこには、メンタル面の成長がうかがえた。
そしてシーズンが始まり、「人生で初めて決められた」という「ダブルコーク1260」を大会で成功させるなどして、好成績を築いてきた。
そこで手ごたえを得た。ただ、慢心はない。
「誰もやっていない技、やっていない構成を」
視野に入れる北京五輪で勝つためには、さらなる向上を求める。
プレ五輪シーズンをいい状態で過ごすことができて迎える2度目の大舞台へ、視界は良好だ。
悔しさをしっかり糧にできたからこそ、そう思える位置にいる。