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カープの“超控えめドラ2左腕”が開幕一軍内定… 担当スカウト「まだ俺も分かってない」と称えるポテンシャル
text by
前原淳Jun Maehara
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/18 11:03
オープン戦の対ヤクルト戦に登板した森浦大輔。和歌山出身で、天理高校時代には春・夏の甲子園に出場した
鞘師スカウト「その姿はプロになっても変わらない」
「天理大で見ていたときと同じ。普通はスカウトが見に来ると、チラチラこっちを見たり、アピールしようとするんだけど、森浦はいつも淡々としていた。その姿はプロになっても変わらない。
ほかの投手の仕上がりが早いから普通は焦ってしまうと思うんだけど、全然焦ってないよね。あいつの中でペースをしっかり考えてやっているんだと思う」
アマチュア時代のスタイルをプロでも貫いている。「目立ってなんぼ」と、自分を表現することが下手なわけじゃない。しっかりと自分を持っているからこそ、環境に左右されない。
スチール練習で、クイックだけではない“実戦派”
春季キャンプ第2クール、スチール練習に投手陣の中から指名されて参加したときもそうだった。ともに参加した大道がすべてクイック投法から1秒2を切る好タイムを連発すると、森浦も1秒21という好タイムは計測した。ただ、すべてクイック投法ではなく、セットポジションで制止する時間を変えたり、足を上げる速度を変えたり、顔の向きで走者をけん制したりと実戦さながらの投球を披露した。
走者の練習でありながら、投手としての技量も見られているだけに、クイックタイムを追い求めても不思議ではない。ただ、練習のための練習にはしない。あくまで実戦に向けた練習と位置づける。
「けん制はあまり得意ではないので、足の上げ方を変えたり、首を使ったりして工夫しています。クイックのタイムはもっと速くしたいです」
周囲にどう見えるかではなく、自分がどうなるべきかにフォーカスしている。
実戦7試合で無失点、7回1/3をわずか2安打
プロの打者を相手にしたピッチングも同じ。打者のバットをへし折るなどアップテンポで豪快な投球を披露した大道に対し、森浦は100km台のカーブなど変化球を多く織り交ぜた。セットポジションでの制止時間の長さを変えたり、足を上げる速度を変えたり、首の動きを使ったりと打者との間合いでも勝負した。
打者4人に無安打1四球だった。
キャンプが進むごとに真っすぐのキレや強さも増し、その存在感もジワリジワリと増していった。2月12日の紅白戦から、佐々岡真司監督が内定を出した3月16日の西武とのオープン戦までの実戦7試合で失点を許さず、7回1/3でわずか2安打に抑えている。
球質が向上した直球は、きれいなフォーシームではなく、打者の手元で動く。