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カープの“超控えめドラ2左腕”が開幕一軍内定… 担当スカウト「まだ俺も分かってない」と称えるポテンシャル
posted2021/03/18 11:03
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Sankei Shimbun
チームの中で存在感を示すためには「目立ってなんぼ」なのかもしれない。26日に開幕するシーズンに広島は新人4選手が開幕一軍に入りそうだ。
1月からハイペースで調整を続けて春季キャンプで監督賞をゲットするなど投手陣の競争を激化させたドラフト3位の大道温貴(八戸学院大)に、野手では堅守と強肩に加え、ヘアスタイルをパンチパーマにするなど日に日に盛り上げ役としても存在感を増す同6位矢野雅哉(亜大)が一軍メンバーに食い込む勢いを見せている。そこに前評判通りの力を発揮して新人ながら抑え最有力候補の同1位の栗林良吏(トヨタ自動車)もいる。
そんな個性派がそろう新人選手の中で、春季キャンプ中盤まで、あまり存在感を示せていなかった森浦大輔(天理大)が、新人最速での開幕一軍入りに内定した。
普通の大学生に見える「技巧派」森浦が淡々と
身長175センチ、体重72キロの体形だけでなく、おとなしく優しそうな風貌からも、普通の大学生のように見える。
150km超を投じる投手がゴロゴロいる広島の一軍キャンプで、制球と変化球とのコンビネーションで勝負する「技巧派」の森浦が目立てるわけがない。それにキャンプ序盤は直球の走りも良くなかったから、なおさらだ。
生き残るだけでも厳しいプロの世界で、多少無理をしてでもアピールしようとする新人たちは過去にもたくさんいた。ただ森浦は1月の新人合同自主トレから自分のペースを貫いていた。先輩選手と一緒になる春季キャンプを迎えても、飄々と、そして淡々と日々を過ごしているように感じられたのだ。
「(見られているからと)狙ってストレートの速度を上げられるわけじゃないので。ストレートの速度に近づけられるように速度に意識を向け、スライダーを(練習の)軸に置いてきました」
明確な目的意識を持つことで、やるべきことに集中した。状態が良くなかった直球の球質向上という課題が残ったことも、かえって他に意識が向いてしまうことへの抑止力となったかもしれない。
鞘師智也担当スカウトも、春季キャンプを過ごす姿に思わず笑みをこぼした。