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バルサ会長選、現地在住なので投票してきました… クライフイズムの改革者ラポルタは“再び”再建できるのか
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byTaku Kudo
posted2021/03/12 11:03
3月7日に開催されたバルサの会長選。ラポルタ新会長もカンプノウ周辺を歩いていた
2003年はベッカム獲得を公約したが今回は……
2003年の選挙戦ではベッカムの獲得を公約にしていたが、今回の選挙戦では具体的な人事や政策をほとんど説明せず、投票日まで1週間を切るまで他候補との公開討論にも参加しなかった。
そして投票直前に行われた3度の討論では「自分には会長として成功した経験がある」ことを繰り返し主張。「政策がない」と指摘するフォントには「君がパワーポイントをいじっていた頃、私はCLを勝ち取っていたよ」と返す余裕を見せた。
結果は先述の通り。多くのソシオはフォントが熱弁した「21世紀型クラブ」への改革でも、フレシャが提示した年間6000万ユーロのスポンサー契約でもなく、ラポルタが持つカリスマ性とリーダーシップを求めたのだった。
カンプノウ周辺を歩いているとなんとラポルタが
投票後にカンプノウの周囲を歩いていると、少し先の人だかりが目に入ってきた。近づいてみれば、その中心にはラポルタがいた。
「ジャン! 写真お願い!」
「ジャン! こっちも一枚!」
その後に他の2候補とも遭遇したが、「ジャン」ほど多くの人に囲まれてはいなかった。一時は6割以上のソシオに辞めろと言われていたのに、いつのまにこれほどの人気を取り戻したのだろうか。
「14」のマスクとクライフイズムの再興
スタジアムを出たところで、先ほどラポルタに写真を頼んでいた若者がいたので聴いてみた。なぜラポルタなのか。すると彼は興奮気味にこう言った。
「カリスマ性を持ったリーダーだからさ! 彼の演説は凄いんだぜ!」
その日の夜。就任会見の壇上に立ったラポルタは、新執行部のメンバーと共に「14」の数字が入ったオレンジ色のマスクを付けた。
友人であり、良き相談役だったヨハン・クライフへのトリビュートであり、失われたクライフイズムを再興するという意思表明でもあったのだろう。