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「ジャンプの神様がもっとがんばれと」世界選手権ノーマルヒルで銅メダル獲得の高梨沙羅が語った頂点への距離感 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2021/02/28 06:01

「ジャンプの神様がもっとがんばれと」世界選手権ノーマルヒルで銅メダル獲得の高梨沙羅が語った頂点への距離感<Number Web> photograph by Getty Images

2月25日、世界選手権ジャンプ女子ノーマルヒルで銅メダルを獲得した高梨。3月3日にはラージヒルの本戦が控えている

「正直言うと、なんともいえない気持ちです」

「今は複雑な気持ちで整理できていないです」

 それから間を置いた記者会見での取材陣とのやりとりでは、優勝したクリネツの279.6点に対し高梨が276.3点と僅差で及ばなかった理由に、テレマークをあげた。

「内容としてはこちらに来て、いちばんいいジャンプを2本そろえられたと思います。ただ空中でスキーが抜ける感じがあって、テレマークを入れることができませんでした。飛型点がいちばんの反省だったと思います」

 テレマークが入る入らないでジャッジによる点数は異なってくる。1回目にトップに立ったクラマーが2回目で表彰台を逃したのも、着地での乱れが響いたからだ。

「私の予想の中で、もう少し行ける、そのまま飛んで行ける気がしていたけれど、予想外のところに落ちてしまったというか」

 思ったより早く着地したことで、完全なテレマークを入れられなかった。

「風を予期してテレマークを入れられた選手もいました。自分の中ではまだ経験が足りなかったし、練習不足があったと思います」

手応え十分。課題もしっかり見えている

 自分に厳しい言葉が並ぶ一方で、手ごたえも口にした。

「(昨シーズンと比べ)自分のジャンプはできつつありますし、目指すところも明確になってきています。昨シーズンはアプローチの出だしだったり、初速をテーマに組み替えてきて、今年はその先、R(助走路の曲線の部分)の入りからテイクオフを練習してきました。一連の動作がつながるようになってきていて、自分のものになりつつある感じはしています」

 その言葉を証明するように、ワールドカップでも2月に入ってから3度優勝するなど好調ぶりを示してきた。難しい状況だった今大会でも、2本ともに一定以上のジャンプをそろえることができたはその成果だろう。

 そしてこうも語った。

「女子ジャンプのレベルが年々上がっているので、自分の何かを変えないとついていけなくて、大きな決断はオリンピックを終えてからゼロから作り直すことでした。その決断ができたから今の自分がいると思います」

【次ページ】 あとちょっとのようで遠い金メダル

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