ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
“飛ばない”方へ用具改正で揺れるゴルフ界 「トッププロ」と「一般アマ」の分断はメーカー泣かせ?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2021/02/25 06:00
R&A、全米ゴルフ協会の「提言」に対して、辛辣なコメントを寄せたロリー・マキロイ
「○○モデル」が謳えなくなる
世界ランク1位のプロも、ビギナーも、同じボールやクラブを愛用できるのはゴルフというスポーツの大きな魅力のひとつ。日本での用品市場規模は、ピーク時から減少したとはいえ世界で2番目の2653億3000万円(2019年/株式会社矢野経済研究所)を誇り、トッププレーヤーの活躍は多くの商品の販売促進の要ともいえる。
それがハナから「プロと一般アマ用の道具はまったく異なるものです」と謳われては、ゴルファーの購買意欲にも変化がもたらされそう。そうなると、ツアープロ自身の商品価値が低くなっても不思議ではない(他方で同じ2月、全米プロゴルフ協会はこれまでツアーで禁止されてきた距離計測機の使用を5月の「全米プロゴルフ選手権」で認めた。こちらは新規のマーケットになりうる)。
さて、飛距離の抑制に関する議論はスーパースターたちの常人離れした、伸び続けるパワーやテクニックに端を発した。観客を魅了するシーンが増えることを、手放しに喜んでもいられないらしい。
道具を使う、しかもその市場規模が大きいゴルフでは、趣味としてプレーを楽しむ人々への影響も少なくないからこそ、ひとつの決定が万人の納得を得ることが困難だ。あるいは、トッププロと一般アマの融合が重宝されてきた用具のトレンドは今後、分断への道をたどることで多くの人が楽しさを保てるのかもしれない。今いる場所は、ゴルフの「観る」と「プレーする」の未来の分水嶺だろうか。