2020年M-1・全員インタビューBACK NUMBER
<M-1ウラ話>マヂカルラブリー野田に浮かんだ“見取り図5票”「志らく師匠はなぜオレらに入れてくれたんだろう」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/02/21 11:04
2020年M-1で優勝したマヂカルラブリーの野田クリスタルと村上
野田 代案の方も、すごいウケるんですよ。伏線をきちんと回収したりもしていて。でも、伏線回収なんて、しゃらくせえな、と。あのネタは、あそこがいちばんバカっぽいわけで。それを封印するくらいなら、あのネタをやらない方がいい。
村上 あのシーンをやりたくて、あのネタをやってるんで。
――あそこでMCの今田耕司さんは、泣きながら笑っていました。
村上 僕の後ろから今田さんの笑い声がずっと聞こえてきていて。すごく気持ちよかったですね。
野田 僕の方は松本さんの笑い声が聞こえてきていて。ションベンシャワーではなく、シャンパンシャワーを浴びているような気分でした。
野田「見取り図5票、マヂラブ1票のイメージだった」
――ファイナルジャッジのときは?
村上 ウケたけど、あのネタで票を入れてくれる人がいるのかなとは、正直、思っていました。審査員の方は、少なからず「M-1にふさわしいチャンピオンを」という意識があると思ったので。「漫才としてどうなの?」と。
野田 おれは見取り図5票、おいでやすこがとおれらは1票みたいなイメージが強かったかな。M-1決勝の1票って、重過ぎるじゃないですか。おいでやすこがも、結成1年のユニットに入れていいの、って考えちゃうと思うんです。でも、まずは富澤さんがおれらに入れてくれて、次に志らくさんも入れてくれたのを見て「あ、許されてる」と思ったんです。「おれらにも票が入るんだ」って。そのときに優勝がよぎりました。志らく師匠の1票は、今でも「なんで入れてくれたんだろう」と思っていますね。
――結果は、マヂカルラブリー3票、見取り図とおいでやすこががそれぞれ2票ずつで、マヂカルラブリーの優勝が決まりました。
野田 審査員の方が上手だったのかも。おれらに票入れない方が得体が知れる。票を入れてきて、むしろ、この審査員たちは得体が知れないなと思いました。
村上 なめていたわけではないですけど、さすがレジェンドだと思いましたね。本当に。
――優勝が決まった瞬間は、真っ先に、何を思いましたか。
野田 もうM-1に出なくていいんだ、って。
村上 解放感、ですね。
――漫才師にとって、M-1は「出たいもの」であると同時に、あるいは、それ以上に「出ざるを得ないもの」なんでしょうね。
野田 1年に1回、命を削らないといけないので。
(【初回を読む】「おいでやすこがを見て、マズいな」 つり革か、フレンチか…迷うマヂカルラブリーを救った“2分40秒間のCM” へ)
(写真=山元茂樹/文藝春秋)