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北海道銀行がロコ・ソラーレに待った! カーリング北京五輪代表争いで発揮された日本ハム流メンタル術
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJCA IDE
posted2021/02/18 17:00
スキップ吉村が大会のMVPに選ばれる活躍を見せ、北海道銀行フォルティウスは6年ぶりとなる日本選手権の優勝を果たした
「ショットの安定感がまったくなかったです」
藤澤は言った。たしかに、これまでの試合と異なり、どこか精彩を欠いた。第5エンドの1投目でハウスを通過するなど、本来の調子ではなかった。
ただこの試合は、北海道銀行の辛抱強さ、揺れないメンタルに勝因があった。
試合中、思いがけない出来事があった。
第4エンド、吉村のラストショットをスイープしていた近江谷杏菜のブラシがストーンに当たり、このショットは無効になった。結果、2点を与えた。
流れを持っていかれてもおかしくはない局面で、選手たちは「大丈夫だよ」と声を掛け合い、チームは落ち着いて試合を進めた。
第7エンドをブランク(0−0)にしたこともその後の展開につながった。続く第8エンドで1点とり、先攻の第9エンドは最少失点の1点で、最後を有利な後攻で迎えられた。
白井コーチのもと克服したメンタル面の弱さ
北海道銀行は日本ハムファイターズ(現・北海道日本ハム)で選手として活躍し、同球団でコーチの経験もある白井一幸を昨年10月からメンタルコーチに迎え、メンタル面の強化も図ってきた。
その成果がチームの戦いぶりに表れていたし、スキップ吉村の、堂々とした姿はその象徴だった。
吉村は中学時代から活躍し、注目を集める存在だった。
2014年、大学を卒業するとともに北海道銀行に加入。前チームまでのスキップから、さまざまなポジションをこなしながらプレーし、2018-2019シーズンからスキップを務めてきた。
ただ、常に期待を集める存在である一方、精神的な弱さを指摘されることもあった。日本選手権で優勝できない期間が続いたこともあり、やめたいと思ったこともあったと言う。そこから這い上がってきた強さがあった。