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ロナウドという衝撃…現実のサッカーを“プレイステーションの世界”に突入させた男【ドリームチーム選出】
posted2021/02/28 17:00
text by
フレデリック・エルメルFrederic Hermel
photograph by
JMPA
バロンドール・ドリームチームインタビューの最終回は、センターフォワードに選ばれたロナウドのインタビューを前後2回に分けてお届けする。
今回の選出での最大の驚きがロナウドだった。センターフォワードはヨハン・クライフで決まりと個人的に思っていたからだった。サッカー界に与えた影響という点ではクライフは空前絶後である。リヌス・ミケルスが考案しステファン・コバチが完成させ、クライフが体現したトータルフットボールは、サッカーのコペルニクス=アインシュタイン的な転回であったからだ。全員攻撃全員守備、フィールドプレイヤー全員がひとつの有機体となって生み出すダイナミックな運動は、個と組織の概念を根底から覆すものだった。サッカーの歴史は、トータルフットボール出現以前と出現以降に分かれる。トータルフットボールの申し子であるクライフは、ひとりの選手でありながら個人を超えた存在だった。
フェノメナがフライング・ダッチマンを破った理由
だが、ロナウドがクライフを破った。獲得ポイントは576対562。僅差ではあるが、1位は1位である。ロナウドには、クライフを上回る「何か」があったということである。それはいったい何であるのか?
本人も述べているように、ロナウドのキャリアは前半10年と怪我から復活した後半10年に分けることができる。そして前半の10年が世界に与えた衝撃はたしかに空前絶後であった。その力強さとスピード、テクニックの配合は、「これまでに見たことがない」ものであったからだ。
たとえばセリエAでロナウドとの対戦経験を持つジョナサン・ゼビナ(元ローマ、ユベントス)はこう語っている。
「タイガー・ウッズがゴルフというスポーツを変えマイケル・ジョーダンがバスケットボールを変えたように、ロナウドはサッカーを別のスポーツにした。サッカーを別の時代へと導いた。かつて誰も見たこともないプレーをすることで、現実のサッカーがプレイステーションの世界に突入した」
またミシェル・プラティニも、ロナウドをディエゴ・マラドーナと比較して、「ディエゴも同じようにドリブルをして敏捷だったがスピードが全然違った」と述べている。
だからこそ彼は「フェノメナ(怪物)」なのだろう。(全2回の1回目/#2に続く・肩書などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)
(田村修一)
――史上最高のセンターフォワードの称号はあなたが得ました。どんな意味がありますか?
ロナウド そんなに大きな意味はないと人はいうけど(微笑)……とんでもないことで、これ以上の喜びはない。『フランス・フットボール』誌の投票委員たちには心から感謝している。僕に投票してくれたジャーナリストたち、僕のサッカーに喜びを感じてくれた人たちにお礼を言いたい。僕はこの喜びを、候補者リストにあげられたすべての選手たちと分かち合いたい。彼らはそれぞれ固有のパーソナリティとプレースタイルでサッカーの歴史に大きな足跡を残した。彼ら先達たちの偉業があって今日がある。だからその中から僕がドリームチームの一員に選ばれたのは、正直ちょっと不思議な気持ちがする。