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桑田真澄コーチ「9回135球」論の理想? 大野雄大、田中将大の“超効率投球”とメジャー最強腕バウアーの頭脳
posted2021/02/14 11:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo NEWS/Hideki Sugiyama/Getty Images
桑田真澄氏の「9回完投135球」の意味するところは何だろうか。
巨人軍のコーチとしては、桑田氏は当然優勝を目指して投手を指導する責任がある。
桑田氏は「菅野智之は完成されている」と言った。菅野も「9回完投135球」を達成したシーズンはないが、必要とあれば完投する能力もスタミナも備えている。
しかし、それ以外の投手を見れば、9回完投は、シーズンで1、2度あれば御の字というレベルで常に後続投手の救援を仰いでいる。優勝を目指す先発投手陣としては、これでは貧弱だ。桑田氏はその気になれば「9回完投135球」が余裕で可能な投手を作ろうとしているのだろう。
ポイントになるのは「イニング当たりの球数」
ポイントになるのは「イニング当たりの球数」だ。9回135球は、1イニング当たり15球。これは投球数の目安となる基本の数字だが、現在のNPBではこの数字をクリアする投手はほとんどいない。
<2020年の規定投球回数以上の投手の1イニング当たりの平均投球数>
〇パ・リーグ
千賀滉大(ソ)17.32
山本由伸(オ)15.48
有原航平(日)15.54
涌井秀章(楽)16.38
高橋光成(西)16.83
美馬学(ロ)15.26
田嶋大樹(オ)17.01
石川歩(ロ)15.55
〇セ・リーグ
大野雄大(中)14.85
森下暢仁(広)16.63
菅野智之(巨)15.85
西勇輝(神)15.18
九里亜蓮(広)16.26
青柳晃洋(神)16.18
14人のうち、15球以内だったのは中日の大野雄大だけである。昨年、大野は10完投6完封を記録して沢村賞に輝いたが、それもこの効率的な投球あればこそだ。1イニングを15球以下で投げるとは、制球力がよく、無駄球がなくなることを意味する。またいわゆるウィニングショットが効果的に使えていることも意味する。