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桑田真澄コーチ「9回135球」論の理想? 大野雄大、田中将大の“超効率投球”とメジャー最強腕バウアーの頭脳
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo NEWS/Hideki Sugiyama/Getty Images
posted2021/02/14 11:01
2020年の大野に2013年の田中、そしてバウアー。彼らのような投手が桑田コーチの「9回135球」論の理想像かもしれない
バウアーは最新技術を使って新球種開発
2019年、法政大学で開かれた「野球科学研究会大会」では、先に触れたトレバー・バウアーがゲストとして登場した。
バウアーは新たな球種を編み出すにあたって、トラッキングシステムなど最新技術を活用し「回転軸をこのくらいにして、これくらいの回転数のこういう軌道の球を投げたい」と極めて明確に語った。理知的で明快、日本の投手とは全く異なる印象を持った。
バウアーは自分がデザインした球種をマスターするために練習をしたが、それは「体に投球を覚えこませる」ようなやみくもな反復練習ではなく、自分の意志を体の先端、指先にまで伝えるための合理的な練習だったはずだ。
そして昨年、ダルビッシュ有との激しいサイ・ヤング賞争いを制してMLB最高の投手の称号を得て、今季ドジャースと3年総額1億200万ドル(約107億円)の巨額契約を結んだのだ。
桑田真澄コーチが取り組もうとしているのは、プロ野球をもっと「知的なスポーツ」へと進化させることではないかと思う。「9回完投135球」は、選手の意識革命をも伴う新たな変革の第一歩なのだろう。
軋轢は多いだろうが、野球のサイエンティスト桑田真澄氏の取り組みに期待したい。
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