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「なぜ、誰も辞任させようとしないのか?」森喜朗会長“女性蔑視”発言問題、3つの素朴な疑問に答える
text by
与良正男Masao Yora
photograph byRepresentative photo
posted2021/02/10 17:05
2月4日、JOC臨時評議会での発言の撤回と謝罪をする記者会見を開いた森喜朗会長
「郵便ポストが赤いのも森が悪いとなっているな」
森会長が総理時代、いわゆる「神の国」発言で批判されているときに、小泉純一郎さんが「郵便ポストが赤いのも森が悪いとなっているな」と言っていましたが、今もまさにそんな状況です。おそらく菅総理はありがたがっているでしょうから、辞任を催促するようなことはないでしょう。
もうひとつの理由としては、「後任がいない」ということです。
もともと大変な仕事でもありますし、コロナ禍で五輪がどうなるか分からないうえ、森会長の発言でさらに混乱しています。そんななかで火中の栗を拾ってくれる人は財界人を含めてなかなかいません。
森会長が自ら辞任しないのも、それが分かっているからという側面もあると思います。
(2)そもそも、なぜ会長に就いたのか?
当初は財界人が想定されていましたが、受けてくれる人が見つからなかった。
そこで安倍晋三総理(当時)が推したのが森会長でした。
たしかに森会長は総理経験者で政界に顔が利きますし、自分でもやっていたラグビーを中心にスポーツ界にも人脈が豊富です。スポーツ好きとは気が合うようで、柔道をやっていたロシアのプーチン大統領とはすぐに意気投合していました。
また、政治記者の先輩・岩見隆夫さんが「永田町の町内会長」と表現したように、とても面倒見がいいのも事実です。ただし、それは“身の回り3メートル”の人にとって非常に助けになるというような狭い範囲でのことになるのですが……。
それに加えて、安倍前総理の“恩情”というのもあったと思います。同じ派閥(清和会)出身ということもありますが、森総理のときに出世コースである官房副長官に起用してくれたことに恩義を感じていました。そこで森会長に“花道”を用意したという意味もあったのではないでしょうか。