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13歳時“イニエスタとシャビを継ぐ逸材”→21歳で戦力外寸前リキの悲哀… バルサ生え抜きの意地を見せろ!
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2021/02/07 06:00
インテンシティ重視のトレンドにあっても、バルサの中盤はアイデンティティーを保ってほしい。プッチならその重責を担えるはず
準決勝に続き、延長戦からの出場となったスーペルコパ決勝では自身もチームも振るわず、今季初タイトルを逃した。今季初先発となった3部コルネジャとのコパデルレイ初戦では、開始早々に警告を受けたこともありハーフタイムで無念の交代。辛勝したラージョとの4回戦も、不完全燃焼のまま後半途中にピッチを退いた。
「デヨンク、ブスケッツ、ペドリがいるから」
それでも1月24日のリーガ第20節では、ラスト数分の出場で待望のトップチーム初ゴールを記録。奇しくも構想外を通告されたガンペール杯と同じエルチェ戦で、恐らく初めてクーマンから褒め言葉を引き出した。
しかし、この時オランダ人指揮官はこうも言っていた。
「ポジションを前に移したフレンキーとアンカーのブスケッツ、そしてペドリの現在のパフォーマンスを見れば、ベストの中盤を見出せたと言える」
クーマンの言葉通り、開幕当初の4-2-3-1から4-3-3に回帰した現在のバルサにおいて、中盤のファーストチョイスはブスケッツ、デヨンク、ペドリの3人で固まった感がある。リキはその下でピャニッチと4、5番手を争う立場にあり、下からは18歳のイライシュ・モリバも台頭してきている。
置かれた状況は今も厳しい。むしろ1試合の重みが増し、メンバーが固定化されていく今後は、さらに出番が減っていくかもしれない。
だが――それでもリキは笑顔を絶やすことなく、ピッチ上では与えられたプレー時間を噛みしめるようにボールを追い続けている。
「自分の頭に諦めるという選択肢はない」
スーペルコパ準決勝後のインタビューで、印象に残った言葉がある。
「今はプレーできていないけど、自分は恵まれている。家族がいて、健康だから。自分の頭に諦めるという選択肢はない。これだけ長くこのクラブでプレーしてきたのならなおさらさ」
暗いニュースばかりでうんざりしているバルセロニスタたちにとって、そのひたすらにポジティブな心意気は、チームの勝利なんかよりずっと価値のあるもののように思えてくる。