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13歳時“イニエスタとシャビを継ぐ逸材”→21歳で戦力外寸前リキの悲哀… バルサ生え抜きの意地を見せろ!
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2021/02/07 06:00
インテンシティ重視のトレンドにあっても、バルサの中盤はアイデンティティーを保ってほしい。プッチならその重責を担えるはず
我慢すれば、道は開ける。
人材の流出が止まらない近年のラ・マシアにおいて、リキは先達の教えを信じ抜いてきた数少ない選手の1人だった。それに昨季の経験から、ピッチに立てば指揮官を見返せる自信もあったのだろう。ゆえに彼は、バルサに残った。
Bチーム時代から貪欲にチャレンジしていたのに
しかし、そこで直面した現実は想像以上に厳しいものだった。
開幕から丸2カ月が経ち、15試合を消化した時点で4試合、計78分の出場にとどまっていたリキの処遇について、クーマンは12月18日の会見でピケの代役として先発に定着したアラウホを例に出し、次のように説明している。
「2人は全く異なる選手だ。私は日々成長するために努力する選手を好む。今現在、重要なのはテクニックだけではない。彼のポジションは競争が厳しすぎることも一因だが、監督の考えを変えられるほど日々のトレーニングでアピールできていないとも言える」
Bチーム時代、リキはたとえ大差で勝っている試合であっても、敢えて自らを追い込むかのように2、3人のマーカー相手に突破を挑み続けていた。その姿勢は、たとえ数分の出番であっても何かしらの爪痕を残すべく、貪欲にチャレンジを繰り返してきた今季のプレーにも通じている。
そんなピッチ上の姿を追ってきた者にとって、指揮官の言葉は俄かには信じ難いものだった。その裏にはリキを奮起させる意図が込められていたのかもしれないが、問題は彼の立場が好転する気配がなかったことだ。
1月、バルサは改めてレンタル移籍を勧めた
迎えた1月、クラブは2023年までの契約更新にサインした上で、リキに改めてレンタル移籍を勧めた。同様に冷遇されていた2歳上のアレニャはヘタフェへと去ったが、彼は断固として意思を曲げず、この冬もバルサに残った。
スーペルコパのPK弾は、そんな矢先に生じたささやかなご褒美だった。
ただ、その喜びも長くは続かない。