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13歳時“イニエスタとシャビを継ぐ逸材”→21歳で戦力外寸前リキの悲哀… バルサ生え抜きの意地を見せろ!
posted2021/02/07 06:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Getty Images
「シーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ボールがゴールネットを揺らした瞬間、小柄なMFは声変わり前の少年のような声を上げ、ピッチを駆け出した。
「4人目までは決まっていたけど、5人目がいなかった。トップチームでゴールを決めたかったから、『自分が蹴る』と真っ先に申し出たんだ」
1月13日に行われた、レアル・ソシエダとのスーペルコパ準決勝。バルサのファイナル進出を決める5人目のPKキッカーに名乗り出た理由について、リキ・プッチは試合後のインタビューであどけない笑みを浮かべながら振り返った。
それは21歳のカンテラーノにとって、数カ月に渡る苦悩がほんの少しだけ報われた瞬間だった。
13歳頃からシャビやイニエスタの後継者だと
小柄だが卓越したスキルとプレービジョンを持つリキは、バルサ加入1年目の13~14歳の頃から、シャビやイニエスタの系譜を継ぐ逸材として注目されてきた。
その名が世界的に知れ渡ったのは2018年夏、トップチームのプレシーズンマッチで対戦したミランのガットゥーゾ監督に「スペクタクル」と言わしめた頃からだろう。
チーム刷新の中で中盤を担う1人、のはずが
その後2シーズンに渡りBチームの中心として活躍すると、昨季後半にトップチーム定着のチャンスを掴み、再開後のリーガでは11試合中9試合に出場。アラベスとの最終節で2アシストを記録するなど、確かなインパクトを残してシーズンを終えた。
さらに、オフにはクラブが大幅なチーム刷新を宣言。アルトゥール、ラキティッチの退団に続いてビダルのインテル移籍も濃厚となったことで、今季は新生バルサの中盤を担う1人となることが期待されていた。もちろん、本人もそのつもりで意気込んでいたことだろう。
しかし、実際は違った。