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“ラグビーだけの聖地”として独占する必要はない? 秩父宮はなぜ「全天候型」に生まれ変わるのか
posted2021/02/05 17:00
text by
野村周平(朝日新聞スポーツ部)Shuhei Nomura
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
2年前、秩父宮ラグビー場で行われたサッカーの公式戦で決勝ゴールを奪ったのは、当時17歳のあの選手だった。
スペイン1部リーグ・ヘタフェにいるMF久保建英。
2019年4月はFC東京に所属していた。ルヴァンカップの鳥栖戦、左足を振り抜きFKを決めた。試合後の囲みでは「客席が近い。町中にある感じで、存在感がある」と会場の雰囲気を語っていた。
FC東京の本拠・味の素スタジアムをラグビーW杯仕様にするために改修していた関係で、秩父宮が代替会場となっていた。サッカーの試合は1964年東京オリンピック以来、55年ぶり。でも近い将来、こうした光景は珍しくなくなるかもしれない。
なぜ秩父宮を建て替えるのか
秩父宮ラグビー場はこの夏の東京オリンピック・パラリンピックのあと、全天候対応の屋根付き完全密閉型に建て替えられる予定だ。文部科学省、スポーツ庁、日本ラグビー協会、地権者である日本スポーツ振興センター(JSC)で構成される「ラグビーの振興に関する関係者会議」が1月15日に文科省で開かれ、整備方針が承認された。
そもそも、なぜ秩父宮を建て替えるのか。
神宮外苑地区を、新しい国立競技場を中心とする「スポーツクラスター」(集積地)にする再開発事業の一環だ。1947年開場で老朽化が進む秩父宮を、隣接する神宮球場と入れ替えてともに新設する計画は15年4月、東京都と地権者間での基本覚書締結によって表面化した。それから6年弱を経て、秩父宮の整備方針が固まった。当初は客席の上だけに屋根をつける簡素なスタジアムも検討されていたが、密閉型で落ち着いた。
新しいラグビー場は現在の神宮第2球場の跡地に建設される。当初は、南側を除く3方向が完成する第1期工事の終わりが26年、すべてができあがる第2期工事の終了が33年の予定だったが、東京大会の1年延期や密閉型とする変更で工期が長引く可能性が出ている。