ラグビーPRESSBACK NUMBER
“ラグビーだけの聖地”として独占する必要はない? 秩父宮はなぜ「全天候型」に生まれ変わるのか
text by
野村周平(朝日新聞スポーツ部)Shuhei Nomura
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2021/02/05 17:00
昨季も白熱したプレーが展開された秩父宮ラグビー場。好条件の立地を生かした活用が議論されている
17年度の実績では稼働101日のうち、ラグビーが84日、他のスポーツが5日、ファッションショーなどが12日だった。スポーツ庁の担当者は「新しいラグビー場は全天候型。ラグビー以外でも使うことができる。全ての人に愛されるラグビー場にしようとしている」と話しており、その際にJSCが管理する代々木第一体育館の事例をあげている。
同体育館の収容は約1万3000人。バスケットやバレーだけでなく、フュギュアスケートなどでも使われ、オペラやコンサートの実績もある。同体育館はフル稼働した場合、年間300日以上使われてきた。収容2万人ほどが見込まれ、民間で運営することになる新ラグビー場がこの水準に近づけば、税金を使わず自立した運営が可能になるだろう。
都心の一等地、スタジアムの価値
個人的には、新ラグビー場を「ラグビーだけの聖地」として独占する必要はないと考えている。
もちろん、これまで同様、さまざまな試合を秩父宮で開催してほしいし、ラグビーが優先的に使うべきだと思う。収益だけを追い求めて、大事なものを失ってはいけない。ユースや学生レベルの試合機会はきちんと確保してほしい。
ただ、22年に始まるラグビーの新リーグでは各チームに本拠スタジアムの確保を求めており、秩父宮は現時点でその対象に含まれていない。ラグビー界がこれまでのように秩父宮に依存するのであれば、新リーグが掲げたビジョンは企画倒れで終わることになる。
都心の一等地にあり、複数の路線駅から徒歩圏内にある2万人規模の球技場は、国内外でもそう例がない。そんな場所で、ラグビーだけでなく、他のスポーツ、イベントが行われたら、スタジアムの価値はさらに高まるのではないか。サッカー界でも以前から都心にスタジアムを建設しようとする動きがあるが、ハードルはかなり高い。今回の建て替えをラグビーにとどまらず、スポーツが文化として根付く契機にしてほしい。