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“ラグビーだけの聖地”として独占する必要はない? 秩父宮はなぜ「全天候型」に生まれ変わるのか
text by
野村周平(朝日新聞スポーツ部)Shuhei Nomura
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2021/02/05 17:00
昨季も白熱したプレーが展開された秩父宮ラグビー場。好条件の立地を生かした活用が議論されている
関係者会議では▽歴史的経緯を踏まえて「秩父宮」の名称を引き継ぐこと▽国際大会の基準に踏まえた様式とすること▽継続的にラグビー競技ができるようにすること▽民間活力を生かす事業方式とすること▽ICT(情報通信技術)を生かして観戦を楽しめる「スマートスタジアム」とするといった方針が確認された。
東京ドームのような密閉型にすることで、音楽コンサートなどでの使用を見込め、収益性が高められる。スポーツ庁によると、今回の建て替えは「ラグビーを通じた共生社会の実現」がテーマといい、地域の防災拠点としての役割も期待されている。
モデルになるパリの「Uアリーナ」
屋根のモデルとなるのが、フランスのパリ郊外に建てられた「Uアリーナ」。17年にはフランスと日本のテストマッチを行った会場だ。新ラグビー場は日照の問題もあって天然芝が難しく、人工芝を敷くことになる。スポーツ庁によると、日本協会はその方針を了承しているという。
この話が出た時、ラグビー専用を維持するのに天然芝でなくていいのか、という疑問がSNS上で散見された。今の秩父宮に長く親しみをもってきたファンからすれば、唐突な人工芝や密閉型屋根という発表に違和感を覚えて当然だろう。日本協会はこれまで議論の途中経過をほとんど明らかにしてこなかった。
一方で、寒空の観戦を余儀なくされていたファンからすれば今回の変更は朗報と言える。また、人工芝の技術は年々向上しており、ラグビーでは国内外の公式戦に使用されている現状もある。いずれにしても、これらの変更は、新ラグビー場を多目的使用して稼げるようにしたいという地権者のJSC、ひいては国が決めた方針と言っていいだろう。
では、どのような使い方が考えられるのか。