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ワクチンが普及すれば東京五輪は開催できる? 感染症疫学専門家「接種しても他人を感染させないかは…」
text by
鳥集徹Toru Toridamari
photograph byGina Ferazzi/Los Angeles Times via Getty Images
posted2021/02/04 17:01
2月2日、米国カリフォルニア州の新型コロナウイルスワクチン接種会場の様子
無観客開催なら900億円にのぼるチケット収入がゼロに
日本の大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は1月21日、記者団に次のように語ったと伝えられています。
「観客がいるのが望ましいが、観客なしで開けないわけではない。あらゆる選択肢を考える」
観客を入れたことで感染が広がれば、東京五輪は「新型コロナに打ち勝った証」どころか、「コロナに負けた大会」として五輪の歴史に大きな汚点を残すかもしれません。ですから、無観客で行われる可能性は十分にあります。
しかし、アスリートのみなさんにとって、観客の声援は大きな力です。開催に賭けてチケットを持っている人たちも、どのような判断が下されるのか、気が気でないでしょう。
さらに言えば、無観客になれば900億円にのぼるチケット収入が無となり、宿泊や飲食への経済効果も見込めなくなると伝えられています(東京新聞Web「東京五輪『中止論』広まる、コロナの収束見えず 無観客ならチケット代900億円がパーに」2021年1月22日)。
観客を入れるためのポイントとは
こうした事態を避けるためにも、なんとか観客を入れて、開催することはできないのでしょうか。木村さんは言います。
「五輪の観客を入れることの可否は、感染者が増えたとしても、それに対応できる医療体制を整えられるかどうかにかかっています」
第三波の感染拡大で全国の重症者が増加し、日本医師会などが医療崩壊の危機を訴えた結果、政府は二度目の緊急事態宣言を発出しました。しかし、日本の感染者数は欧米の数十分の一に過ぎません。それなのに、なぜ医療が逼迫したのか。その背景に、特定の病院にコロナ患者が集中する一方で、8割を超える民間病院での受け入れが進んでいないなど、日本の医療が抱える問題点が、多くの識者によって指摘されています。
木村さんもこう言います。