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あのイブラ様が退場で同僚に謝罪… 今も“毒舌”ながらミラン10年ぶりセリエA制覇への精神的支柱に
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/02/04 11:01
39歳となっても相変わらず豪放磊落なイブラ様だが、チームをしっかりとまとめている
前線で進境著しいのはFWレオンで、危機意識と健全なポジション競争によってプレーに責任感が出てきた。
指揮官「イブラ抜きでもコンセプトが」
指揮官ピオリは「現在のチームの根っこは、イブラとDFキヤル、そしてMFサーレマーケルスが来た1年前にある」と語り、「このミランはイブラ抜きでもプレーのコンセプトが固まっている」と胸を張る。
アタランタとインテルに連敗した後、1月最後の試合となった第20節ボローニャ戦で、ミランは再び白星をつかんだ。2-1の粘り勝ちだった。
先制して迎えた55分、ボローニャの新DFスマオロとの競り合いでPKを得たイブラは、信じられない行動に出た。自らを「神」「王様」と称してはばからない尊大さの塊のような男が、PKキッカーをMFケシエに譲ったのだ。
「キッカー1番手はもちろんイブラ。でも……」
実は、26分の先制PKをイブラは失敗していた。
ボローニャGKスコルプスキにコースを読まれて、一旦はボールを弾かれてしまった。FWレビッチが瞬時に押し込み得点は入ったが、イブラがPKを1発で決めきれなかったのは、ELでのスパルタ・プラハ戦も含め今季4度目のことだった。流石の王様ズラタンも1日で2本目ともなれば、逡巡したのだろう。
ケシエは冷静に決勝弾を叩き込んだ。
試合後「チームのキッカー1番手はもちろんイブラ。でも彼がボールを譲ってくれたのだから、それを尊重した」と語り、互いの信頼関係を強調した。
第20節までにミランが得たPKは、5大リーグで最多の14本。どこよりも敵陣へ果敢に攻め込んでいる証であり、チームとしてPKを決めることは王様としてのプライドを満たすことより何倍も大切なことなのだと、イブラヒモビッチは行動で示したわけだ。
ダービー敗戦後はチーム全員に頭を下げた
後半に退場処分を受け敗退の一因を作ったコッパ・イタリアでのミラノ・ダービーでは、試合後のロッカールームでチーム全員に頭を下げた。
北欧出身の後輩MFハウゲが、練習中にわからないイタリア語があって困っていたときは、こっそり教えてやった。
10年前には想像もできなかったイブラヒモビッチが、2021年のミランを引っ張っている。