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【箱根駅伝】51秒及ばず…山梨学大「つながらなかった襷」 9区遠藤が“誰もいない鶴見中継所”で思ったこと
posted2021/01/29 17:01
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
L:JIJI PRESS R:Yuki Suenaga
想いを託したい仲間は、すでにいなかった――。
9区から10区のランナーに母校の襷をつなぐ鶴見中継所。毎年、“先頭から20分以内”のドラマが起きる場所で、今回もまた辛いシーンが見られた。
わずか51秒及ばずに涙をのんだのは、プルシアンブルーの山梨学院大学。繰り上げスタートのルールに則り、9区の遠藤悠紀(4年)が中継所にたどり着いたとき、すでに10区のランナーはまっさらな襷をつけて走り出していった後だった。
無人と化した中継所に倒れ込むようにゴールしたとき、遠藤の目にはどんな光景が映っていたのだろう。
「もうアキ(渡邊昌紀/3年)の姿はおろか、影すら見えませんでした。最後のカーブに入るまでは、まだ行ける、まだ間に合うんじゃないかと思って走っていたんですけど……。やってしまったって思いましたね」
再起をかけた予選会を突破した後に
今年の山梨学院大はレース序盤から苦しんだ。
ルーキーながら1区に抜擢された新本駿が区間最下位と苦しい走り。襷を受け取ったエースの森山真伍(4年)も、本調子とは言えない状態で挽回できず。4区を走った留学生のポール・オニエゴ(3年)が区間賞の走りで一矢報いたが、それでも4区を終えて総合19位と流れに乗れなかった。
一昨年、山梨学院大は屈辱の予選落ち。33年続いていた箱根駅伝の連続出場を途切れさせていた。再起をかけた今シーズン、チーム最大の目標は本戦復帰を果たすことだった。
コロナ禍で難しい調整を余儀なくされたが、チームは見事に予選会を突破。だが、その立て役者となったメンバーの多くがその後は故障に苦しんだ。予選会、全日本大学駅伝、箱根駅伝と大きな試合が続く中で気持ちが逸り、つい肉体の限界値を超えてしまったのかもしれない。予選会と今回の箱根駅伝を両方走った選手は、遠藤を含めわずか5人だけである。