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【高校サッカー怪物の名言】大迫勇也「娘も『パパ、半端ないって』」、名波浩「テーマはどう勝つか。その域に達した」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/01/11 06:00
鹿児島城西時代の大迫勇也。「半端ないって」は彼の代名詞となった
<名言3>
乾は10年に一度の選手。コーチが教えたら下手になる。
(岩谷篤人/Number995号 2020年1月17日発売)
◇解説◇
ひたむきさが注目されがちな部活サッカーの中で、誰が呼んだか「セクシーフットボール」。2000年代中盤の野洲高校は持ち前のテクニカルさで相手の思考の逆を取る、ロマンあふれるチームだった。
第84回の高校選手権、鹿児島実業との決勝では延長後半に田中雄大のパスカットから洗練されたカウンターが発動する。弾丸のようなサイドチェンジを受けた乾貴士が、得意のドリブルでのカットインで相手を引き付けると意表を突いたヒールキックで平原研につなぎ、そこから走りこんだボランチの中川真吾が折り返し、最後は瀧川陽がゴールネットを揺らした。
選手権史上、今なお語り継がれるゴラッソで日本一に輝いた野洲。その強さの源には地元の街クラブ「セゾンFC」の存在があった。そこで総監督を務める岩谷篤人の発想も独特である。
「サッカーはイエスマンじゃダメ。ずるい発想が大事。相手の見えへんところでちょっと悪いことしたろとかね。そういう発想を瞬間的にしていかなあかんスポーツ。私も若かったから練習に入って、ぱっと相手の逆を取ったったり、おちょくったりする。『うわ騙されてやんの』とか言うてね。すると子供は『そうやるんや』と吸収する」
こう語る岩谷。選手ごとに“カスタマイズ”した指導法を取るのが特徴だが、その中で抜群の才能として認めたのが乾だった。小学校時代はあえて無理やり教えることはせず、乾の向上心が爆発する瞬間を待った。そして迎えた小学校6年時だった。
「5カ月間徹底して技術をやった。乾も飢えてたんでしょ。6年間の遅れを一気に取り戻しよった。卒業する頃には、中学生をスコスコに抜いてたよ」