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「感謝の気持ちを」印象的だった紀平梨花の4回転サルコウと選手たちの明るい笑顔【全日本フィギュア】 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT

posted2020/12/30 11:06

「感謝の気持ちを」印象的だった紀平梨花の4回転サルコウと選手たちの明るい笑顔【全日本フィギュア】<Number Web> photograph by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

4回転サルコウも成功させ、総合得点234.24点のハイスコアで優勝した紀平梨花

「達成感を味わえないまま、辛かったです」

 今シーズンはスイスを拠点に、トリノ五輪銀メダルなどの活躍で一時代を担ったステファン・ランビエルのもとで練習を続けてきた。その中では表現面をはじめ細部に磨きをかけてきた。

 だが新型コロナウイルス感染拡大の影響で、エントリーしていたフランス杯が中止になるなどして大会に出られない日々が続いた。

「達成感を味わえないまま、辛かったです」

 実戦のない時間をそう振り返る。

 葛藤を抱えつつ、臨んだ初戦。通常ならチャレンジャーシリーズなりローカル大会なり、何かしらの大会を経てグランプリシリーズへ進み、全日本へ──プログラムを熟成させ、実戦を重ねて修正していく段取りは踏めなかった。

 にもかかわらず見せた完成度は、大会がない中での時間をおろそかにしなかったこと、葛藤があっても崩れなかったメンタルの強さをも示していた。

「やりきったのが大きかったです」

 222.17点で2位となった坂本花織も笑顔だった。

 ショートプログラム(2位)こそ、思うような演技にならず落胆を隠さなかったが、フリーは3回転ルッツでの減点はあったものの、他のジャンプはすべて加点を引き出したことが物語るように、質の高さを見せつけた。

 ジャンプのみならず、ほぼノーミスの演技に、終わった直後はガッツポーズも飛び出した。

「やりきったのが大きかったです」

 言葉が弾む。

 昨年の大会は、ジャンプのミスが相次ぎ、6位に終わった。あのときが嘘のような演技は、悔しさを1年間、たしかなばねにしたことを思わせた。

【次ページ】 「中野先生から『勝ちにいっては駄目』と」

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