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「感謝の気持ちを」印象的だった紀平梨花の4回転サルコウと選手たちの明るい笑顔【全日本フィギュア】
posted2020/12/30 11:06
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Naoki Nishimura/AFLO SPORT
いくつもの笑顔が並んだ。
2020年12月27日、全日本フィギュアスケート選手権女子フリーが終わった。
印象的だったのは、選手たちの明るい表情だった。
中でも輝きを放ったのが、優勝した紀平梨花であった。
25日のショートプログラムでトリプルアクセルを成功させ、「見せ場」と語っていた片手側転を決めるなどミスのない演技で79.34点をマークし1位。
迎えたフリー、曲は『Baby,God Bless You』。ピアニスト清塚信也がテレビドラマ「コウノドリ」に提供した曲だ。
4回転サルコウを鮮やかに決める
最初のジャンプは4回転サルコウ。数シーズン前から練習を始め、そして試合でチャレンジすることもあったが、まだ成功させたことはない。
この日は違った。軽やかに舞い上がると、鮮やかに着氷。スピードが落ちず、流れを損なわないきれいなジャンプは、GOE3.19点と高い評価を引き出す。
続くトリプルアクセルこそ回転不足になったが、残るジャンプはすべて加点を得る出来。154.90点の高いスコアを得ると、総合得点も234.24点のハイスコアをマークすることになった。
演技が終わると、はにかむような笑顔を浮かべた。
「今回決めたいと思っていたサルコウを決められてうれしい気持ちと、コロナ禍の中でも応援してくださる声がたくさん届いて、その方たちの笑顔が見たい思いが強かったです」
笑顔で、でも高揚なく落ち着いて語り続けたが、まぎれもなく、1つ殻を破った日となった。
同時に目をひいたのは、シーズン初戦であったにもかかわらず高い完成度だったことだ。